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どんなに良い投資でも、負けるときは負ける

株式投資から離れて10年後。清川さんは株での失敗を機に、証券アナリストの資格を取得。

証券アナリストといえば、金融商品の分析のプロである。そこで、かつての自分や株初心者へのアドバイスを聞いた。



「まず、僕のところに相談に来る人の多くが、投資をYouTubeや雑誌で勉強しているんですね。これは本当に間違いで。

例えば、YouTubeでよく見るのが『投資信託のこの銘柄で300万円が40年で3000万円になります! これで老後は安泰です!』みたいなもの。いい銘柄を推しているものもありますが、それでも断言するのは言い過ぎ。

NISAだって、IDeCoだって、損をするときはするんです。だから勝つと思わないで、安全なお金を残しながら、負けてもいいくらいに思えるお金しか拠出してはいけません。そして知識のないまま、手を出さないほうがいいでしょう」。

それでも超低金利時代の現在、ただ貯金をするよりも、投資に回したいと思うのが人情。できる限り失敗を回避するにはどうしたらいいだろう。

「まずは、YouTubeを鵜呑みにしないこと。同じ時間を使うなら、僕は大手証券会社の主催する証券アナリストのセミナーに行く方をおすすめします。だいたい3000円程度で受けられますし、参加費無料というセミナーもありますよ」。

加えて、清川さんは株について相談する相手にも注意が必要だという。

「ファイナンシャルプランナーや税理士、公認会計士に株の相談はしないほうがいいですね。僕が失敗したように、公認会計士は株のプロではありません。一方で証券アナリストは株の数値を読むプロなので、株式投資の相談は証券アナリスト一択ですね」。

さらに、もうひとつ、今後気を付けてほしいというのが「IFA」という制度だ。

「これは、SBI証券や楽天証券の代理店みたいなものです。

ただ、彼らがいくらアドバイスをしても、証券会社並みの調査力はない。今IFAはとても流行っているので、今後IFAから株や証券を買う人も増えると思いますが、彼らから買うなら、大手証券会社での購入をおすすめします」。

2つ目の失敗は、生命保険に加入して60万円の損失!


さて、清川さんがもうひとつ大きな損をしたというのが生命保険だ。2つの生命保険で清川さんは60万円の損失を出したという。

とはいえ、生命保険は「転ばぬ先の杖」的な存在で、ここで儲けようとか、損をしたとか思う人はあまりいないのではないだろうか。だが、清川さんは「生命保険の方が、株よりも損得が大きい」と話す。

「株は下がるかもしれないけど、上がるかもしれない。つまり得をする場合もあるわけです。ところが生命保険は、商品を選んだ時点で損得が確定する。つまり間違った保険を選んでしまったら、100%損するということです」。

生命保険は入っておくもの。清川さんも最初はそう思っていたという。

「当時、ちょうど結婚をしたこともあって、生命保険に入った方がいいかなと考えていました。自分で払える範囲で払っておけば、将来何かの役に立つよねって」。

そんなとき、またまた勤務先に保険外交員が飛び込み営業に来たのだ。

「どうせ入るものだし、誰から入っても一緒だろうと思って、病気や死亡時に補償が出る月額1万2000円ぐらいの保険に入りました」。

ところが数年後、友人の紹介で別の保険外交員と会った清川さんは、自分の入っている保険が損だらけの内容だということに気づく。

そこで、これまでの保険は解約。新たな保険に入り直した。


がん保険と医療保険は、ほとんど得がない!? 保険を選ぶコツ

「新しく加入した保険なのですが、実はそれも詳しく調べると損をする内容でした(笑)。そこでもう一度再検討して、今は医療保険部分は解約をして、積み立てだけを残しています」。

医療保険だけ解約したのには訳がある。清川さんはがん保険と医療保険は、どんな商品を選んでもほとんどと言っていいほど損になると考えているからだ。



「テレビなどで、“月々3000円で保険料は一生涯変わりません”みたいなCMをよく見ますよね。

3000円ほどの医療保険の多くは、一生払い続けるプランになっています。例えば、もしあなたが今30歳で、95歳まで生きるとしましょう。

月3000円×12カ月×65年で、支払い総額は234万円になります。一方、補償内容はというと、入院日額5000円、手術をしたら10万円が一般的に受け取れる額です。

では、234万円を5000円で割ってみてください。468泊をしないと元が取れないことになる。

つまり長期間、寝たきりの闘病生活を送ることがなければ、基本的には得をしないようになっている。がん保険や医療保険に入るなら、貯金をするか、同じ金額でつみたてNISAをやった方がいいと言えるでしょう」。

そうは言っても、やはり保険に加入していないと不安という人もいるだろう。

「積立ならば、なかにはいいものもありますので、じっくり精査するといいと思います」。

清川さん曰く、保険を選ぶ際に大切なことは、保険の相談窓口にひとりで行かないこと。そして、その場で決めず、「第三者の目」を入れることだという。

「窓口へ相談に行くということは、知識がないけれど、保険に入ろうと思っているわけですよね。そこで提案された保険内容を見ても、マイナスポイントを見つけられないまま、予算内だった場合、多くの人はそのまま契約をしてしまうんです。

急いで契約をする必要はないのですから、ファイナンシャルプランナーはもちろん、友人でも、家族でもいい、一度自分が契約しようとした保険を客観的にチェックしてもらうようにしましょう。

例えば、運転免許も持っていないのに、交通事故の補償がついていたり、思わぬ穴が見つかることがありますから」。

お金に詳しい清川さんですら、情報を鵜呑みにすると失敗することがある。

だからこそ、オーシャンズ読者は識者のアドバイスも得ながら、慎重に吟味することを心がけてほしい。

林田順子=取材・文 新澤 遥=写真

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