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これはボルドー市内の主なスケートスポットを網羅したもので、どういうところが良いのかも紹介しているのだが、それだけでなくポジティブな方法でパブリックスペースをシェアすることについても記載することで、積極的に周囲とコニュニケーションをとるようにしているとのこと。

そうして今やボルドーの政治家の方は、パブリックなスペースで、スケートボードは若い人たちにとってポジティブなものなんだよということをスピーチするにまでなっている。

スケーターなけでなく、世間の方のためでもあるスケートボードのガイドブック。 カンファレンス「スケートボードでまちを変える-Welcome Skaturbanism-」より引用。

スケーターなけでなく、世間の方のためでもあるスケートボードのガイドブック。 カンファレンス「スケートボードでまちを変える-Welcome Skaturbanism-」より引用。


それでも「こんなことのために貴重な税金を使うなんて言語道断だ!」と思う方も当然いるだろう。

だがスケーターバニズムはお金のかかるものではないとレオさんは話している。

確かにボルドーでは、若者のため、フィジカルアクティビティのため、カルチャーのためにシティプランニングのひとつとして財源が投資されたが、この活動の根本は街づくりになるので、そこにはすでに計画があって、財源が確保されているので、その予算の中から、スケートボード用にベンチを置いてもらえばいいだけ。要はデザインを変えるだけで良いということだ。そう考えれば、第一歩としてお金の面でのハードルは下がるのではないだろうか。

相互理解や思いやりを大切に

そう考えると、今最も大きな課題といえるのがやはり人々の意識や捉え方になるのではないだろうか。

日本では東京五輪での活躍も相まって、現在大半の人がスケートボードを「スポーツ」と捉えているかと思うが、長年の愛好者の方々はそれだけでなく、カルチャーとして、あるいはセルフィズムの手段として、あるいはアート活動として多義的に捉えて活動している。そういったストリートから出てきた新しい文化が、日本ではなかなか馴染んでこなかったことが、今の現状を生み出しているのではないかと思う。

スケートボードを見ることが経験としてないと、”なにか”視野が悪くなるんじゃないか、”なにか”危ないんじゃないかといった固定概念や偏見は生まれやすいし、必然的に距離が生まれてしまう。となると当然コミュニケーションをとることもない。それでは行政側も根底で許容できなくても仕方のないことだろう。

だからこそ、そこを許容するために、ストリートにおけるハードや安全性をどう共存させていくのかを、狭い日本の歩道で考える必要があるのではないかと思う。

これはカルチャー側から見たスケートボードと、都市デザイン側から見たスケートボードが違っては良い方向には進まないし、当然一般の方々の理解も必要になる。それぞれがお互いにすり寄って、譲り合って、新しい日本の都市が創られていくことを心の底から願っている。

次回は、そんなボルドーの状況を踏まえたうえで、日本との違いや現状、行なっている取り組みを紹介していきたいと思う。
吉田佳央 / Yoshio Yoshida(@yoshio_y_
1982年生まれ。静岡県焼津市出身。
高校生の頃に写真とスケートボードに出会い、双方に明け暮れる学生時代を過ごす。
大学卒業後は写真スタジオ勤務を経たのち、2010年より当時国内最大の専門誌TRANSWORLD SKATEboarding JAPAN編集部に入社。約7年間にわたり専属カメラマン・編集・ライターをこなし、最前線のシーンの目撃者となる。
2017年に独立後は日本スケートボード協会のオフィシャルカメラマンを務めている他、ハウツー本の監修や講座講師等も務める。
ファッションやライフスタイル、広告等幅広いフィールドで撮影をこなしながら、スケートボードの魅力を広げ続けている
「Skateboarding Unveiled VOL.3」より 


吉田佳央=文、写真 レオ・ヴァルス、日建設計NAD=Special Thanks
記事提供=FINEPLAY

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