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不測の事態が起きたときは、導かれたと思う

写真:dede dos film

写真:dede dos film


訪れた家は、以前の旅で「この辺り良いね」と夫婦で話していた場所だった。長い旅を続けてきたカンマさんたちを、おばさんたち家族は温かく迎えてくれた。

「偶然にもおばさんの旦那さんが、福島原発の設計者だったんですよ。僕らはあの事故で手放したものがとても大きかったし、人生自体を変えられた。先に進むしかないと思いつつ、いつか帰れるなら帰りたいという思いもあったので、モヤモヤしていました。だから、原発の話を聞いたときは、気付けば泣いてしまって……。

だけど、ここに暮らして3カ月ぐらい経ったあと、近くのビーチを歩いていたら『あれがあったから、今こうしてビーチで家族で幸せな時間を過ごせているんだ、僕らは動かされてここにいるんだ』とストンと気持ちが落ち着いんたです」。

おばさんの好意で、そのままカンマさん家族は、しばらくその家に滞在することになる。そして、その間に空き家を使ってもいいという人が現れた。

荒れた空き家は自分たちで快適にリノベーション



「畳はずぶずぶだし、ネズミが走っているような小さな家。でも自分たちでリノベーションすればいいじゃんって。あと最初、タダでいいって言われたんです(笑)。さすがにお金は払いますって言ったら、じゃあ月1000円ちょうだいと。さすがに5000円払ってましたけど、家賃を払いに行くと、お寿司食べに行きましょうって奢ってくれて。

大家さんは完全に赤字なんだけど、『あなたたちが来てくれてうれしいわ』っていつも言ってくれて。僕は大家さんのできないことを率先して手伝った。そういう世界なんだよね」。

リノベ後のカンマ宅。

築30年以上の空き家をリノベして、自分たちが心地良い場所に。


ボロボロの空き家をリノベーションし、畑を耕し、自給自足の生活。そのうちに料理上手の繭子さんが焼くケーキが話題となり、宮崎市内のお店へ卸すようになる。そして、これがきっかけとなり、『CAFE10』をオープンすることになる。

『CAFE10』の外観。

『CAFE10』の外観。


「ここも掘立小屋みたいなボロボロの物件で。自分たちでリノベーションして、オープンしました。周りからはこんなところ誰も来ないよね、って言われていたけど、自分たちが楽しければ良いじゃん、ってスタンスでしたね。だって、僕とまゆちゃんが楽しいことが僕たちにとっての幸せで、カフェが流行ることが幸せではないんだから」。

『CAFE10 × VAN de COSMICA』の店内。窓からは海が見える。

店内の窓からは海が見える。


だが大方の予想に反して、カフェは大人気となる。

「すると、よく来てくれる地元のおじさんが、『温泉付きの民宿があって、誰も使わないからどう?』って。ただ、見てみたらすごい大きいんですよ。これは改装するのにお金がかかるし、やめようかと言っていたら、出資するという人が現れて、ホテルをオープンすることになりました」。


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