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形あるものはなくなると知っていれば失うことは怖くない



それが、以前OCEANSでも紹介した『TAGIRI HOTEL』だ。カンマさんの世界観が生かされたチルな雰囲気が漂うこのホテルは、予約が取れないほど大人気となった。

だが開業から5年ほどが経った2020年、カンマさんは突然ホテルのクローズを発表する。

「ちょうど、本来僕が求めているものと何かが違うなって思っていた矢先に、急に大家さんが返して欲しいと言ってきてね。自分たちが創り上げてきたものをまた手放すのかって途方にくれた。現実的には『なんでだよーっ』て怒りが込み上げて、内面的には『あーやっぱりそう来るのね』って。両方の感情を味わったよ。

だけど、怒って、シャウトしたら、あぁもういいか、って。法律を盾にすれば続けることはできたんだろうけど、風は次に行けと行っているわけ。それで告知をしたら、コロナ禍が訪れて。だから、本当に流れが来ていたんだよね。人は生まれたら死ぬでしょ。物も同じで、作ったら壊れる。そのプロセスは抗えないんだよね。それを知っているかどうかはとても大きい」。



移住者と地元民とのトラブルは各地でも起きていると聞く。だが同じ事柄でも、失敗と捉えるか、成功と捉えるかは本人次第なのだろう。

「そもそも何を失敗って思うかが難しいよね。だって、例えば初めてコーヒーを淹れるとき、最初からいきなりおいしいコーヒーは淹れられないでしょ。それって失敗だけど、成功でもある。僕にとってのいちばんの幸せは、まゆちゃんと子供たちで幸せに暮らすこと。だからそこさえ守られていれば、なんでも成功だと思うんだよね。『Happiness is a journey, not a destination!”(幸せは、目的地にあるのではなく、その過程にあるのだ)』これにつきますね」。

そしてカンマさんは宮崎の次の生活場所をヨーロッパに決めた。次回はカンマさんの海外移住計画について教えてもらおう。

カンマタカヤ=写真提供 林田順子=取材・文

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