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研究を突き詰めたからこそ見えた社会実装への道筋

水エンジンの必要性をつぶさに語る浅川だが、宇宙に関心を持ったのは高校生になってから。小さい頃から憧れていたわけでもなく、「『航空宇宙工学って面白そう』くらいの軽い気持ちだった」と笑う。

「研究室で人工衛星本体について学ぼうと思っていましたが、人気が高いコースだったので僕の成績では行けなかったんです。それをきっかけに、人工衛星に搭載する推進エンジンについて研究を始めたら、知的好奇心を刺激され沼にハマってしまいました(笑)」。

研究室では、基礎研究のみならず、実際の小型人工衛星に搭載するエンジンをつくり、宇宙に打ち上げるという、実利用のプロジェクトに携わる機会に恵まれた。自分たちで設計して組み立てたものが宇宙に飛んで行き、人工衛星を動かしていく。その経験は、基礎研究と社会実装のつながりを実感できるものだった。

Pale Blueの研究室の様子。

Pale Blueの研究室の様子。


さらには研究者時代に初めて参加した、小型衛星に関する世界最大級の海外カンファレンスで、民間企業が多く参加している様子に衝撃を受けたという。

「研究発表のお堅い場だと思って行ったら、アカデミックサイドとビジネスサイドの関係者が会場のいたるところで商談を繰り広げていたんです。小型衛星利用が実社会でも盛り上がっている。そこでエンジンは間違いなく必要になると確信しました」。

基礎研究と実利用のプロジェクトを両方経験していたからこそ、両者の間のギャップも痛感していたという浅川。基礎研究では、エンジン内の一部分で起こる事象をひたすら調べ課題に向き合うが、実利用では、内部で何が起こっていようが、極論、推進機全体で見た時にエンジン性能が機能していることが重要視される。研究だけを深めても、実装できる推進機の開発スピードは上がらないと感じたからこそ、「せっかく研究してきた技術を実利用に結び付けたい」と事業化に関心を深めていったという。

東京大学には、大学発スタートアップをサポートする観点から、起業について学ぶ実践的な講義がある。浅川はそこで、のちにPale Blueの共同創業者となる研究室の同期メンバーと事業計画を立案。数々のビジネスコンテストに出場しアイデアを発信していったことが、起業への道につながっていった。

「ビジネスコンテストでのピッチを見てくれていた投資家が、『研究シーズを事業化する国のプログラムに一緒に応募しよう』と声をかけてくれたんです。それを機に研究室の小泉宏之教授を巻き込み、水エンジンの研究実績を積んでいた後輩も誘って、4人での起業が決まりました」。

Pale Blueの創業メンバー。

Pale Blueの創業メンバー。

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