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2023.06.13

ライフ

東大研究室から宇宙ビジネス起業へ。「水エンジン」の社会実装で切り開く宇宙開発の未来



ゼロから事業を立ち上げ、成長し続けるスタートアップには、スモールビジネスオーナーたちが共通してもつ「夢中の力」がある。その力こそが、成功を掴みとる大きな原動力となるのだ。

アメリカン・エキスプレス(以下、Amex)はそんなスモールビジネスオーナーたちを、ビジネス・カードを通じてバッキングし続けてきた。

本連載では彼らの夢中にスポットを当て、どんな思いで、どのような壁を乗り越えながらビジネスを進めてきたのか、話を聞いていく。

安全で持続可能なエネルギー資源がこれからの宇宙開発を支えていく

Pale Blueは「水」を推進剤として用いた小型衛星用エンジン技術を提供する、東京大学発のスタートアップ企業だ。創業者でCEOの浅川 純は、同大学院で航空宇宙工学を専攻し、数々の小型衛星・探査機プロジェクトに参画してきた。

小型衛星の打ち上げは2010年以降急激に増加し盛り上がりを見せる一方で、搭載できる推進機の開発は追いついていない。

「現在、大型衛星の推進機で使われているのは希少性の高い高圧ガスや毒性の強いガスで、それを燃料にしながら小型化を進めるのは技術的に難しい。だからこそ、安全かつ安価で、持続可能性の高い水は、これからの宇宙開発を支えるカギになると考えています」。

Pale Blueが開発した世界初の水蒸気式や水プラズマ式の推進機は、重量2キロ弱、200mlほどの水を燃料に、約3年も宇宙での活動を続けることができるという。

浅川らが開発した小型衛星の水エンジン。両手に乗るほどの小ささだ。

浅川らが開発した小型衛星の水エンジン。両手に乗るほどの小ささだ。


「推進機の搭載により小型衛星の活動範囲が広がれば、農業や金融、通信などさまざまな領域での発展につながります。例えば、土壌の表面画像データを収集・分析することで、作物の育成に役立つ情報が得られたり、地盤災害のリスクの高い場所がわかったりする。

インターネットの基地局を宇宙にも設けることもできます。いずれは人類の補給拠点として月の重要性は高まり、動く手段としての水エンジンも必要不可欠になるでしょう。小型衛星の利用を広げ、研究・産業・市場それぞれのポテンシャルを開放したいと考えています」。
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