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過去の経験はすべてつながっている

NPO法人を立ち上げる前は、旅行会社やアウトドアの会社に勤めていたというコバ。彼の自立心や、コミュニケーション能力、行動力などは、ビジネスマン時代の経験が生きているようにも思われる。

「NPO法人を立ち上げたこともそうですけど、過去の経験は全部、線になって今につながっているなと感じますね。会社に行っていたころは、毎朝起きると『今日、課長休んでないかな』と思うような日々をすごしていたわけです。ああいう経験はものすごく生きているなと思います。それが結果、障害者と健常者、両方の視点から見ることができるようになったわけですから」

とにかく“好奇心と行動力”の人である。エリックの著書を読んで「この人に会いたい」と思ったら、とりあえずアポを取ってみて、アメリカ・コロラドの自宅に会いに行く。そしてそのエリックから突如、イベントがあるから来ない?と誘われれば、お金がなくともまずは行きたいと声を挙げ、それから何とか行ける方法を見つけ出す。

たまっているマイルで渡航することもあったし、寄付文化が根付いている海外では、時に手を差し伸べてくれる友人も現れた。だがそれができるのは彼が行動したからこそである。

今やれることはやっておきたい

「高校3年生のときに、いちばんの親友が脳梗塞で突然亡くなったんです。それから2年後に自分の父親も亡くなったんですが、離れて暮らしていたので、それを知ったのは新聞の訃報欄でした。だから心のどこかで、人はいつ死ぬかわからないと思っているところはあると思うんです。もちろんそれほど刹那的に生きてるとは思わないんですが、でも今やれることはやっておかないともったいないなと」

そんなコバにとってこの映画は「人生の宝物」だという。

「人生の中の宝物が1つ増えました。僕みたいな人間の映画が世の中に出ていくなんて、人生に1回のことだから。しかもこの映像はずっと残って、たくさんの人に見続けてもらえる。そういう意味で、生きている自分がそこに描かれているのは本当に大きくて。特に言葉の力が描かれているのは大きい。やはり見えない自分にとっては言葉と音がすごく大事なので。僕にとっては本当に宝物ですね」

なお、視覚障害者が映画を楽しむためには、画面に映るものを補足的に説明する「音声ガイド」が必要となるが、当然のごとく本作でも劇場公開にあたり、(携帯端末で使用する)UDキャストの「音声ガイド」が提供される。

「そういう意味で僕は(取材日の)つい2週間前にようやく自分の映画の全貌を知ることができたんですよ。それまでももちろん観てはいたんですが、それは僕にとって音とセリフしか聞こえないものだった。

とにかくUDキャストの音声ガイドってすごくいいんです。スクリーンに映し出されるアメリカの景色を、どこまでも奥行きがあるような、3次元の言葉にしてくれてるので。むしろ逆に健常者の人も副音声ガイドを聞いてもらいたいです」



壬生 智裕 =文
東洋経済オンライン=記事提供

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