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人生を変えた出会い

「僕はすごく幸運な人間だと思います。たまたまの出会いでしたから。もちろんそのケースワーカーさんにかけられた言葉というのも、人によっては突き放されたような感じがして、受け入れられない方もいると思うんです。

でも僕の場合は、それがたまたま自分にとっての荷物を降ろしてくれるような言葉だった。エリックとの出会いもそう。たまたま彼が(メールに)返事をしてくれたから、彼に会うことができた。そういうふうに、たまたまが重なったものを逃がさずにできたのは、本当に運がよかったと思います」

エリックとの出会いは、コバの人生を大きく変えた。クライミングなら、障害があってもなくても、誰でも楽しむことができる。なら自分も日本で障害者にクライミングを教えたい。

「もし日本にそれが行われてないなら、それをやるのがコバの仕事なんじゃない?」。エリックが背中を押してくれたこともあり、「見えない壁だって、越えられる。」をコンセプトにしたNPO法人モンキーマジックを立ち上げることになる。

「2005年にNPO法人を立ち上げてからもう18年。よくここまで続いたなという感じではあるんですけれども。ただ、わたしがNPO法人の代表ですという話をすると、いまだに『小林さんの本業は何なんですか?』と聞かれることがあるんですよ。

だから『わたしはこのNPO法人モンキーマジックが仕事です。これで食べてます』というお話をするんです。ただどこかからお金をもらえるわけでもないので必死ですよね。日々のお金をつくるのにどうしたらいいのか、知恵をしぼり続けないといけないので。やはりアメリカと日本には寄付文化の違いがあって。社会がコミュニティーを支えていくという意識に違いは感じますね」

モンキーマジックが行っている「交流型クライミングイベント」は、障害の有無に関係なく、同じ場所、同じルールで楽しむことができる。そこでは健常者と障害者が「助ける・助けられる」の関係ではなく、同じクライミング仲間として「助け合い・楽しむ」ことができる場所となっている。

「今はこの『交流型クライミングイベント』を全国に広げて、全国47都道府県、すべてに持っていこうとしています。ここは障害者と障害のない人がクライミングというスポーツを通じて、同じ立場でみんなで楽しもうという場所。これは自分にとってあるべき社会の縮図だと思う。

そしてこの場所を体験した人たちが、それぞれ自分のコミュニティーに帰って、ここで経験したことをまた別の形で広げていく。そういうふうに着地できたらいいなと思います」


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