当記事は「FUTURE IS NOW」の提供記事です。元記事はこちら。 今回のテーマは、「分かち合う」。ここ最近、シェアリングエコノミーが着目されていたり、SNSで感情を共有し合ったりと、さまざまな場面で「分かち合う」ことが一般化しつつあります。
そこで注目したいのが、東京都荒川区に直営店を構え、全国792市、23区合わせて815地域への展開を目指す〈街中スナック〉。
従来のスナックとは違い、あえてカラオケの設置をせず、深夜営業も行わないこちらは、若者からシニアまでがつながることで、どんな世代でもこの空間で過ごす時間を分かち合う場所となっています。どうして今、世代を超えたつながりが街に必要なのでしょうか。そしてつながった後の世界線は? 運営を手がける〈イナック〉CEOの田中類さんに尋ねます。
多世代が繋がれば、街のお悩みごとも解決できる。
2022年3月の福井店のオープンを皮切り、東京、沖縄、京都、千葉と全国に広がりつつある〈街中スナック〉。事業展開を行う〈イナック〉CEOの田中類さんが、さまざまな世代が交流するような今までにないスナックを作ろうと思ったのはコロナ禍より少し前。自身が営んでいた東京都荒川区のたい焼き屋さんで、「昼のスナック」を始めたことが契機となります。
「実は僕、お酒を飲んでこなかった人間なので、スナックに行ったことがなかったんです。街の人の居場所となるスナックを作りたかったんですけど、夜営業の想像がつかなかった。だから昼にやろうと考えて。しかも、スナックとうたっているのに提供するのは、たい焼きとコーヒーという(笑)。
それでも、街のおばあちゃんたちや学校帰りの子どもたちがたくさん店に来てくれて、一緒に楽しくおしゃべりする場所になっていきました。
それからコロナ禍に入ると、売上的にも厳しくなったので〈スナックるい〉という名前で夜の営業を始めることにしたんです。すると、近隣で働く学校の先生や会社員、ご近所のシニアとか、街に関わるいろいろな人が来てくれて。
当時、とくにシニアの人たちの居場所がなくなっていたし、働く世代は保育園の閉鎖などによって子どもを預かってくれる場所を失っていたんですが、そういう異なる世代がスナックでつながることで、暮らしのちょっとした困りごとが解決していったんです。
『私のお店で子どもを見ておくよ』『新しい事業にチャレンジするなら融資するよ』といった感じで。こうした古き良き時代の光景を目の当たりにし、スナックには世代が違った人たちをつなぎ、そこで暮らす人たちのお悩みごとを解決する力があると気づいたんです」
街の人も街自体も元気になるような居場所を作りたい——。そんな田中さんの思いに、同じ街でシニアの暮らしのお手伝いを行う〈MIKAWAYA21〉代表・青木慶哉さんも共鳴。彼の助言やサポートもあり、田中さんが思い描く新しいカタチのスナック〈街中スナック〉ができあがりました。
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