言葉③寝る前に鏡を見て、「自分の力をすべて出したか」と聞く。それに答えられないのなら引退した方が良い
Q:ホーバスさんのように常にアップデートし続けるために、何かアドバイスをお願いしたいのですが。 僕は毎日、毎日、試合が終わってから、練習終わってから寝る前に鏡を見て、「今日は自分の力をすべて出したか」と聞きます。
もし答えが「はい、やりました」だったらそのまま寝て、明日もう1回トライする。でも「いや、今日は80%ぐらい出した」だったら、それは良くないじゃないですか。それを直せないのであれば、もう引退した方がいい。簡単です。
Q:違いを分けるのは、結局は日々の過ごし方だということですか? トップレベルのアスリートは、みんな技術とか身長とか、力のある人たちばかりですよ。それがなければ、そのレベルまでいけないんです。その先は、信じてることとか、自信があるかどうか、それがなければ代表レベルは多分入れないんです。
Q:最後に、THE WORDWAYは言葉を大事にしているメディアです。ホーバスさんが、大切にしている言葉、支えとなっている言葉を教えてください。 今は、Believe。「信じてる」は口だけでは足りないですし、結構深いものです。どこまで信じられるか。(東京五輪の)女子は100%信じた。だから決勝戦、アメリカとやったじゃないですか。
「信じてる」という言葉は、自分の力も信じています。あなたの力も信じてる。チームの力も信じてる。みんな「信じてください」「Believeして」って言うじゃないですか。でも簡単じゃないんです。口だけでは足りないです。
上手くなりたい気持ちがあれば、少しずつ自信が上がり、少しずつ強くなる。でも信じてなければ、上手くなりたい気持ちもないと思いますよ。だから簡単な言葉だけど、難しい言葉、深い言葉です。
Q:日本の選手は、「自分を信じる」ことを苦手な選手が多いのかなとも感じます。指導者として、いかにそこに向き合っているのですか? ある選手がオリンピックが終わってから、どこかのメディアに「トムが、私以上に私のことを信じてくれた」と答えているのを聞いて嬉しかったです。だから、「僕は信じてる」「あなたの力を信じてる」と。そうすることで、少しずつ選手たちの自信が上がっていくと思います。
Q:選手を信じることが、ホーバスさんの指導、組織作りの原点なのですね。 そうです。みんなで目標を決めたら、「なんでこんな練習やってるの」「このレベルじゃダメだよ」ってなるし、「だったら明日もっともっといい練習をやろう」ってね。その状態で、鏡を見たら「今日は足りなかった、明日頑張ろう」ってなるじゃないですか。全部繋がってますよ。
トム・ホーバス 1967年1月31日生まれ。米ペンシルベニア州立大卒業後、ポルトガルリーグのスポルティングを経て90年にトヨタ自動車に入団。94年にNBAのアトランタ・ホークス入り。その後トヨタ自動車や東芝にも所属し、2010年にJX-ENEOSのアシスタントコーチに就任。女子日本代表のアシスタントコーチなども経験し、17年に女子代表ヘッドコーチに就任。東京五輪で銀メダルを獲得し、21年9月に男子代表監督に就任。身長203cm。