こちらは、威勢のいい女亭主。竹内さんは、「ディディ、ナマステ」と話しかける。
ディディとはネパール語でお姉さんという意味で、彼女は大勢の客と従業員の女の子たちを切り盛りしていた。
酒のつまみのようなおかずが並ぶホナチャ。
「これだけあるよ、何を食べる?」と言われると、「うーん、全部食べたい」と竹内さん。その言葉通り、次々と全種類のメニューがテーブルにやってきた。
この店のディディ。明るく元気な彼女たちの存在もあって酒が美味しくなる
なかには、鉄板で温めてから運んでくれるものも。調理してくれるのも、料理を運んできてくれるのも女性たち。この店は全員女性だ。
「いったい何人いるの?」と竹内さんはキョロキョロするけれど、みんなテキパキ働いていて、数えられない。
「これはいったい?」と首をかしげながらも、好奇心旺盛の竹内さんは「美味しい、美味しい」と食べる。
得体のしれないものの多くは、水牛の内臓だ。「脳みそ」「膝軟骨」「肝臓」「膵臓」「胃袋」「舌」など色々。竹内さん曰く「ネワール族って、内臓料理が好きなんだよね」。
小さなお好み焼きに見える粉もの料理の「バラ」。
「これは何?」と尋ねると、「バラだよ」とディディが教えてくれた。「お好み焼きとも異なる味だね」と竹内さん。米粉を使っていて、真ん中に目玉焼きがのっていた。
お酒は、ビールにチャン(米からできたローカル酒)、ロキシー(米やヒエ、トウモロコシなどの穀物から作る焼酎)など。ボトルキープもできる。
竹内さん、何やら思いついたようでひと言。「なんだか知った雰囲気と思っていたけれど、これは新橋のガード下だね!」。
店の混み具合も、ディディの朗らかさも、外にまでテーブルが出ている様子もまさにガード下の飲み屋街のようだ。
次はコチラ。「ヨマリだよ」とディディ。ナイフで切ってみると、中からトロっとしたこし餡のようなものが。もうひとつはカスタードクリームに似たものが入っている。
デザートなのかよくわからないまま、食事の合間にいただく。
よくよく話を聞くと、ネワール族が満月の日に食べるお菓子だそう。
全体的に辛目の味付けで、それをチウラ(干したお米)と一緒に食べる。
店のドアは開けっ放しになっていて、外道にもテーブルと椅子が置かれていた。
あるネパール人男性がしきりに注文をしに店に中に入ってくる。「あのおじさん、俺たちが来たときからいるよね」と竹内さん。
仕事帰りなのか、来店したときよりも、少し酔ってきた雰囲気。そんなところも新橋ガード下っぽい。
最後は、竹内さんの一声でディディたちと記念撮影。
「みんな、私の故郷から連れてきたの。親戚たちよ。今日はお休みの子もいるから、ほんとはもっと大勢」と女亭主が笑顔で話してくれた。
名残り惜しいけれど、夜も更けてきて、お腹も一杯。店を後にした。