直営店は横浜・鶴見に出店したことで3店舗に。ディーラー数も増え、昨年からは高速道路のサービスエリア(SA)に置かれる自動販売機でも味わえるようになった。
これはミル挽き珈琲を展開するトーヨーベンディングとの共同事業で、東北自動車道の佐野SA(下り)、東名高速道路の海老名SA(下り)、新名神高速道路の宝塚北SA(上下線集約)にオリジナルの自動販売機を設置。
自家焙煎のオリジナルコーヒー豆を使い、試飲を何度も重ねて実現した“納得の味”を提供している。
「ここまで順調にステップできてきましたが、まだまだ世の中は缶コーヒーやインスタントコーヒーが主流。ひと手間かけて丁寧にドリップするだけで美味しさはまったく変わるということを伝えていきたいし、その実コーヒーショップは星の数ほどあるということから、自分たちなりのスタンスというものを大切にしたいと思っています」。
一方、プライベートでは子供たちとの時間を大切にしているように見えた。
前回にインタビューしたのは3年前。そのときと比べ、焙煎所の敷地内には自転車が2台あり、トランポリンが置かれ、障害物が設置されるなど、明らかに子供向けと思われるものが増えていたのだ。
「コロナ禍もあって子供たちといる時間は以前よりも増えました。学級閉鎖になったときには2カ月くらい千葉に来て、敷地内にある母屋で寝泊まりしていました。海へ行ったりしながら、のんびりと家族で過ごしていました」。
インスタにも子供たちとの画像がポストされる。屈託のない笑みを見せる様子には、父と子の距離が心地いいものであることを教えてくれる。
「父となって親の気持ちがわかるってよく言いますけど、それは確かにあるんです。俺の親父は、年の3分の2ほどは興行で各地を周り、ほとんど家にいませんでした。
たまに帰ってきても夜は遅いし、俺も兄貴も既にベッドの中ということが多くて。その頃は親父がどんな気持ちだったかなんて知るよしもなかったけど、今子供たちの寝顔とかを見ると愛おしく思えてくるんです。
あ〜、親父も俺のことをそんな気持ちで見ていたのかな、とか。そんな想いになることはあります」。
子供たちには口うるさく言わないという。最低限のルールとして「挨拶はきちんとする」ということくらい。それは坂口が征二から教わったもの。坂口家のイズムのようなものだ。
改めて、坂口の現在は順調だった。事業は安定し、家庭は円満で、ロングボードを楽しむほどに身体は復調し、「そろそろ旅に出たい」とさえ考えている。そして今年からは表現活動にも力を入れていきたいとも。
そうして今日も都会と自然を行き交いながら、自身の人生にとって大切なものすべてを惜しみなく楽しんでいる。
坂口憲二●1975年生まれ。東京都出身。俳優、実業家。ファッション誌でレギュラーモデルを務めたのち俳優の道へ。フジテレビ系列のテレビドラマ「医龍」シリーズで主役を務めるなど多くの作品に出演。2018年、無期限の芸能活動休止。同年、「ザ・ライジングサン・コーヒー」を設立。