部下の能力の正しい見立てが必要
これを避けるためには、ただ単に部下の意向を聞くだけではなく、結局、部下の能力の正しい見立てが必要です。
彼・彼女はどんな経験をしてきており、その結果、どんな知識やスキルを持っているのかを上司はわかっていなければなりません。
そして、これは部下を日々観察していなければなかなかできません。仕事を与えて、その結果だけをみていては、部下が誰かの力を借りたのか独力でやったのかわかりませんし(仕事を進めるだけならわからなくてもよいのですが)、仕事が思った以上に簡単だったのか難しかったのかもわかりません。
仕事をやっているプロセスを観察する必要があるのです。
日々の言動の観察をし、記録をしているか
そして、それを一つひとつ記録することも重要です。毎日事細かにとは言わないのですが、重要なことがあった際に、「こんな場面でこんな仕事をこんな風にして、できた/できなかった」的なことを記録するのです。
人間の記憶はもろいものですので、部下の言動をいくら日々観察していても、なかなか覚えきれるものではありません。
ですから、簡単なものでよいので、部下一人ひとりについての記録メモを残しておくのがよいでしょう(人事評価をする際にも必要となるはずですし)。
それが積み重なっていけば、徐々に部下の正確な能力の見立てができるようになるはずです。
ピンチに現れるヒーローを目指す
そうすればこんなことができるようになります。部下が「ぜひ自分に任せてください」と主張するので、まずはその通りにやらせてみる。
しかし、まだ独力ではその仕事はできないという見立てだったので、じっと近くで失敗しないかどうか、窮地に陥らないかどうかを見守る。
案の定、部下はしばらくするとなかなか仕事を進めなくなってくるので、タイミングを見計らって「何か手助けする必要はないかな?」とサポートに入る、というようなことです。
部下にしてみれば、一度は言う通り自由にやらせてくれ、しかもピンチにはすかさず現れて助けてくれる。まるで正義のヒーローのような存在になることができます。
「任せて、任せず」は管理職の仕事
忙しい今の管理職にここまで望むのは酷かもしれませんが、できる管理職はたいていこの手のことをやっているものです。
私の好きな言葉に、パナソニック創業者の松下幸之助氏がマネジメントの要諦として言ったという「任せて、任せず」というものがあります。まさにこの言葉は今回のように、任せてはみるものの放置するのではなく見守って、必要なときに手助けして結果責任を取るということでしょう。
管理職になった人はずっとこの「程度」を、どうしたらよいのか悩みながら進んでいくのではないでしょうか。
管理職である以上、この悩みは消えることはありません。むしろ悩むことそのものが、上司としての重要な仕事なのではないかと思います。