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海士町ではある理由でジョギングができない!?



透明人間のごとく、誰ともコミュニケーションを取らずに暮らせる都会とは事情が違う。中村さん曰く、海士町は「親戚の集まりのようだ」という。

「例えば、海士町にある居酒屋に入って、ほかのお客さんに挨拶しないで自分の席に座ることはできないんですよ。全員自分の親戚っていう感じなんです、ほんとに。親戚に知らん顔して席に座れないでしょ?

外をジョギングをしてても、知り合いが車から顔を出して『お前どこまで行くの?』って、車に乗せられる。ジョギングをしたくてもできないんですよ、この島は(笑)」。

雪景色の海士町

雪景色の海士町。


互いが互いの素性をよく知る島で、他人行儀はご法度である。海士町に来たら、ものすごい勢いで知り合いが増えていくというが、「そういう人間関係が楽しいと思う人はうまくやれるし、わずらわしいと思う人は無理」と中村さん。

「悪い噂も一瞬で回っちゃうんだから(笑)。こういう規模の島ならどこも同じような感じじゃないかな」。

移住前に一度は島を訪れるべし



「海士町は実業家や有名企業の社長が定期的に通ってくる島なんです。海や山、釣りも人気だけど、何か魅力のある島なんだと思う。だからうまく立ち回れるタイプはずっといるよ」。

では、海士町でうまくやれる人はどんなタイプなのか。

単純に海が好きとか、楽しみ方を自分で探せる人かな。仕事はあるしね。自分で何かをやりたいなら、パイオニア精神を持っている人だけど、行政と一緒にやるとがんじがらめになるパターンが多いから、やっぱり島民を巻き込む力がある人だと思う」。

そこで、中村さんは提案する。

「本気でうまくやりたいなら、まず僕に会いに来いって感じですね(笑)。いろいろ教えてあげられるし、人をつなげられるから。あと、移住する前に島を見に来るといいよ。そのときに2、3人知り合いができないなら、多分うまくいかない。島の人間込みで、島が好きになるかを見極めた方がいいと思う」。

家族移住はうまくいくケースが多い



うまく行きやすいケースとして、中村さんが付け加えたのが「家族移住」だ。海士町はいち早く親子留学に取り組んだ自治体だが、子供がのびのび暮らす姿を見て、滞在を延長する親も多いという。

家族連れは海士町に早く馴染んでますね。本当に幸せに暮らしている人たちが多いかな。子供が仲をつないでくれるんですよ。島のおじいちゃんおばあちゃんが面倒を見てくれるし、気持ち的に楽に子育てできると思う」。


あくまでも海士町のケースとはいえ、新しい地域に入ったらその土地が大切にしてきた文化をリスペクトするのは当然のこと。島移住を考えている人にとって、中村さんのアドバイスは一聴の価値があるはずだ。

そして、島全体がみんな顔見知りといった濃厚な人間関係が嫌いじゃないなら、ぜひ海士町へ。島に降り立ったら、中村さんのお泊り処「なかむら」のドアを叩くことをぜひおすすめする。

中村徹也=写真提供 ぎぎまき=取材・文

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