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2023.02.21

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花粉の飛散量は前シーズンの2倍!? 薬剤師に聞く、症状別・花粉症市販薬を選ぶコツ

今年の花粉飛散量は多め。早めに対策を取りたい方必見の情報です(写真:kotoru/PIXTA)

今年の花粉飛散量は多め。早めに対策を取りたい方必見の情報です(写真:kotoru/PIXTA)

当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です。元記事はこちら

花粉症がつらい時季が始まりました。日本気象協会の予測では、今年は花粉飛散量が前シーズン比2倍となる地域もあるとか。

今すぐにできる対処法は、物理的に花粉を避けることで、マスクやメガネで花粉を遮断したり、布団や洗濯物を室内に干したりするなどの工夫があります。それでも症状が出たら早めに「薬」の力を借りて対策をとり、快適な日々を取り戻しましょう。

「鼻水や鼻づまりが気になって仕事に集中できないけど、すぐに受診できない。だからといって、市販薬は病院の薬に比べて効果が弱そう……」
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そんなふうに思っている人におすすめしたい対処法が、ドラッグストアで買える「病院で処方されるのと同じ成分の市販薬」を活用する方法です。たとえば、こんな薬があります(表1)。



これで、病院でもらうのと同じ成分の薬がドラッグストアでも手に入ることがおわかりいただけたでしょうか。

ところが、花粉症と一口にいっても「くしゃみが気になる」「鼻水が水のようにだらだら流れてつらい」「鼻がつまって鼻呼吸ができない」「眼がかゆい」など、症状はさまざまです。セルフケアを実践するに際し、自分にあった薬をどう選べばいいのでしょうか。


くしゃみ・鼻水・鼻づまりに効く薬の選び方

2020年に改訂された「鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版(日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会)」では、くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった鼻の症状に対する治療薬として、「第2世代抗ヒスタミン薬」と「鼻噴霧用 ステロイド薬」を推奨しています。

では、「第2世代抗ヒスタミン薬」と「鼻噴霧(ふんむ) 用ステロイド薬」どっちがいいのでしょうか。
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結論からいうと、鼻の症状であるくしゃみや鼻水、鼻づまりの3症状がすべて出ていてつらい場合には、「鼻噴霧用ステロイド薬」が良い選択肢となります。

なぜかというと、くしゃみや鼻水、鼻づまりでは症状が起こるしくみが異なり、「第2世代抗ヒスタミン薬」が得意とするのは、くしゃみや鼻水の症状を和らげることだからです。一方の「鼻噴霧用ステロイド薬」は鼻の3症状すべてに高い効果を示します。

ただし、薬は正しく使わないと効果を得ることができません。「点鼻薬って苦手」と、使うのをサボりがちになるのであれば、続けやすい飲み薬の「第2世代抗ヒスタミン薬」を使ったり、受診して医師に相談したりするという選択肢も考えてみましょう。

もし「点鼻薬に興味があるけど、使い方に自信がない」「なんだか難しそう」と、点鼻薬の使用をためらっている場合は、遠慮なく薬剤師に相談してください。使い方を一緒に確認して、使いこなせるようにしましょう。薬剤師がセルフケアを実践するためのお手伝いをします。
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「第2世代」は眠くならない?

さて、花粉症の鼻症状対策の大まかな選択肢がわかったところで、「第2世代抗ヒスタミン薬」と「鼻噴霧用ステロイド薬」の話に戻ります。花粉症シーズン中、自分で続けられそうなのはどちらなのか検討するために、それぞれの特徴や選び方を見ていきましょう。

「第2世代抗ヒスタミン薬」の選び方についてですが、「第2世代抗ヒスタミン薬」とひとくくりにしても、「鎮静作用」の程度が異なるので選ぶときには注意が必要です。

鎮静作用というと、真っ先に思い浮かべるのが「眠気」かもしれません。ところが、実はそれだけではないのです。

眠気という自覚できる症状だけではなく、鎮静作用には気づかないうちに判断力、注意力、作業効率の低下を起こす症状も含まれます。そのため、薬によっては添付文書で「乗り物の運転」「危険な機械操作」などを禁じたり、注意を促したりしている場合があります。

運転や機械の操作をする際は、薬のパッケージの裏面や、添付文書などを見て、自分のライフスタイルにあった薬を選択することが大切です。



気になる「効果」については、非鎮静性の第2世代抗ヒスタミン薬の間で大きな差はないとされています。また、「眠くなる薬のほうがよく効くんでしょう」と誤解している方がときどきいますが、そのようなことはありません。

したがって、基本的には眠くなりにくい「非鎮静性」の第2世代抗ヒスタミン薬のなかから、1日の服用回数、値段、近所のドラッグストアの品揃えなど、自分の使いやすさに合わせて選ぶことがすすめられます。

続いて、「点鼻薬」の選び方と使い分けについて説明します。

花粉症に用いる市販の点鼻薬には、前述した「鼻噴霧用ステロイド薬」のほか、「血管収縮薬」があります。

「鼻噴霧用ステロイド薬」(表3)は、使い始めてからおよそ1~2日で効果が見られます。定期的に使用することで、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの3症状のいずれにも高い効果を発揮します。

しかも、鼻噴霧用ステロイド薬のなかには、鼻症状だけではなく「眼の症状」にも効果があるという報告もみられます。気になる副作用についても、鼻噴霧用ステロイド薬には第2世代抗ヒスタミン薬とは異なり、眠気を起こす成分が含まれていないので眠くなる心配もありません。



一方の「血管収縮薬」の点鼻薬は使うと速やかに鼻づまりが改善します。そのためつい連用しがちですが、使い続けると、この薬が原因となって「薬剤性鼻炎(血管収縮成分を長く使うことでかえって粘膜が腫れて鼻づまり症状などを起こすもの)」を起こすおそれがあります。使用は必要なときのみとし、1~2週間にとどめるようにしましょう。


眼の症状に使える市販薬の選び方

花粉症の眼の症状に用いる市販の点眼薬には「点眼用抗ヒスタミン薬」「点眼用遊離抑制薬」があります(下の表)。

「鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版」を見てみると、「点眼用抗ヒスタミン薬」「点眼用遊離抑制薬」は同列に選択肢として挙げられているので、価格、ドラッグストアの品揃えなどをみて手に入れやすいものを選ぶと良いでしょう。



なお、ソフトコンタクトレンズをしている人は、目薬の防腐剤に注意してください。

「ベンザルコニウム」という防腐剤は、ソフトコンタクトレンズに吸着される性質があります。レンズをつけたまま点眼すると、成分と角膜が接触し続けることで角膜炎を起こすおそれがあります。少し面倒ですが、点眼の際にはレンズをいったん外して、点眼後10分以上経ってから装着するようにしましょう。

ドラッグストアには病院で処方してもらうのと同じ成分の市販薬が数多くあります。ただし、現在治療中の病気によっては、市販薬の使用によりかえって症状が悪化してしまったり、ほかに飲んでいる薬がある場合には飲み合わせが悪くて思わぬ健康への影響が現れたりすることもあります。

少しでも心配なことやわからないことがあったら、遠慮なく薬剤師に相談してください。安心・安全に薬の力を活用して、一緒に花粉症のシーズンを快適に乗り切りましょう。

高垣 育=文
東洋経済オンライン=記事提供

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