新型コロナの影響で売り上げが一時9割減、廃刊の危機に陥った「地球の歩き方」。しかしその後、話題のコラボを連発して復活。中でもひときわ大きな注目を集めたのが『地球の歩き方 JOJO ジョジョの奇妙な冒険』です。編集者の由良暁世氏に話を聞きました(撮影:今井康一)
当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です。元記事はこちら。 1979年にダイヤモンド・ビッグ社から刊行され、日本人の海外旅行のスタイルに深く影響を与えた海外旅行ガイドブックシリーズ「地球の歩き方」。新型コロナの影響で同シリーズの売り上げは9割減という苦境に陥った。
しかし、その出版事業が2021年1月に学研ホールディングスへ譲渡されると、旅行ガイドブックの老舗ブランドの存続をかけ、新シリーズやコラボ企画を次々と展開。『地球の歩き方 日本』『地球の歩き方ムー ~異世界(パラレルワールド)の歩き方~超古代文明 オーパーツ 聖地 UFO UMA 』などさまざまな新刊がSNSで話題となり、現在「株式会社 地球の歩き方」の売り上げはV字回復を果たしているという。
そんな話題作の中でも、ひときわ大きな注目を集めたのが『
地球の歩き方 JOJO ジョジョの奇妙な冒険』。2022年7月に、シリーズ初の漫画コラボとして販売され、『ジョジョの奇妙な冒険』のファンはもちろんのこと、旅好きからも熱烈な支持を集めている。
本作を手がけたのが、編集者の由良暁世氏。異色コラボと思いきや、話を詳しく聞いてみると、彼女のこれまでのキャリアがあってこその作品のようだ。
海外への憧れを育んだ『ジョジョ』という漫画
就職情報誌などの発行事業を展開していたダイヤモンド・ビッグ社が、就職先を決めて入社前の海外研修ツアーへ行く学生の会員組織で無料配布していた冊子から生まれた『地球の歩き方』。
(撮影:今井康一)
学生たちの口コミによる旅情報が好評で、旅人に寄り添うガイドブックをコンセプトに一般販売されるようになり、バックパッカーなどに愛用されるようになった。近年は20代の学生や往年の購買層にあたる40〜50代など、幅広い年齢層の読者を抱える。
自身も学生時代から旅行好きで『地球の歩き方』を愛用していた由良氏は、2000年にダイヤモンド・ビッグ社に入社。2年間の営業職を経て、入社3年目の2002年に念願の編集部へ配属となる。
由良暁世(ゆら・あきよ):1977年生まれ。広島県出身。早稲田大学第一文学演劇映像専修を経て、2000年、ダイヤモンド・ビッグ社入社。営業部を経て編集部に異動。『aruco』シリーズの立ち上げや『地球の歩き方フランス』などの編纂に関わる。2021年に地球の歩き方はGakkenグループに。現在はコンテンツ事業部出版編集室室長を務めるかたわら、ヨーロッパエリアのガイドブックを中心に『旅の図鑑』シリーズなども担当(撮影:今井康一)
ポケットサイズのガイドブックシリーズの立ち上げに携わり、ガイドブック制作を1から学んだ後、『地球の歩き方』本体ではヨーロッパ方面を担当。2010年3月に創刊した、『aruco』シリーズをイチから立ち上げた。
「『aruco』シリーズは何度もリピートしている国・エリアや初めて訪れる土地でも、定番の観光スポットだけでは少し物足りないという人に向けた情報を、女性目線で載せるというコンセプト。
『aruco』シリーズでも<『テルマエ・ロマエ』に学ぶ古代ローマ人の生活とは?><“ベルばら”の名場面でたどる憧れのヴェルサイユ宮殿>など、漫画を通してその国の歴史や文化伝える画を作ってきました」。
もともと由良氏は少女漫画なども含めて漫画全般が好きで、2つ上の兄の影響で小学生時代から『週刊少年ジャンプ』読者だったらしく、『ジョジョの奇妙な冒険 』は1987年の掲載当時からリアルタイムで読んでいたという。
「子どもの頃はアガサ・クリスティなど海外ミステリーにもハマっていましたが、小4の頃から読み始めた『ジョジョ』も、海外が舞台で少し怖いミステリー的な要素があり、すぐ引き込まれていきました。いま思えば、海外への憧れみたいなものも『ジョジョ』から影響を受けていて、海外旅行に興味を持つきっかけの1つになっているところもありますね」。
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