【写真17点】「インディゴのリーバイス「501」よりブラックの「551」を支持するプロのデニム論」の詳細写真をチェック 特集「プロご指名の本命デニム」とは…… 若い頃は、自身が「これ!」と思うデニムばかりを頑なに着用していたものだ。好きが高じ、偏りを持ってしまった人も少なくないだろう。スタイリストの菊池陽之介さんも「そんな節はあった」と回顧する。
しかし職業柄、あらゆるデニムに触れていくうちに好みにも変化が訪れたとか。そんな彼が今身につけているデニムは……。
菊池陽之介●専門学校を卒業後、スタイリスト熊谷隆志氏に師事。2004年の独立後、メンズファッション誌、ブランドカタログ、テレビ、CMなどでスタイリングを披露する傍ら、『MARCY'S FUN LIFE!』や『OCEANS Chanel』などYouTubeでも活躍中。
インディゴとは異なるブラックデニムの旨味
「そりゃもう、周りの誰もがはいていたので、当然、自分もリーバイスばかりはいていましたよ(笑)」。
青春時代をそう振り返る菊池さん。ただ、スタイリストという仕事を通じて、デニムを見る目にも変化が表れたという。
「学生時代はヴィンテージブームだったので、“XX”、“Sタイプ”、“Fタイプ”、“66”……もういろいろ手に取りました。ただ、仕事でデニムに触れたことで、今はブランドに縛られず、フラットに見られるようになってきましたね。
『ここのディテールはこうじゃなきゃいけない!』とか、『アメリカ製が絶対!』みたいな感覚は、もうほとんどありません」。
そんな菊池さんでも唯一こだわっているポイントがあるとすれば、「デニム=ブラック」というカラーチョイスである。
「黒の落ち着いた佇まいだったり、どのシーンでもなんのアイテムでも受け止めてくれる汎用性は、いつの時代も変わりません。特に大人になると着る服を選ばないといけないシーンも増えるので、その重要度は一層高まります」。
特に惹かれるのが、色落ちしたブラックデニムだ。
「ブラックデニムの経年変化が好きなんですよ。はいていくほどに浮き上がる、なんともいえない濃淡の表情がいい。墨黒っぽい感じで単調になりがちなブラックカラーに奥行きが現れるというか。グレーっぽいところまで落ち切ると、なおいい。
トップスや足元に黒いアイテムを採用したとしても、ワントーンながらもグラデーションっぽく見えて、スタイルに奥行きが出るんです」。
501のコンプレックスと551のちょうど良さ
菊池さんはさらに、ここ最近の意識の変化として、リーバイスの501に関する意外な本音を話してくれた。
「501が全てのデニムの基本だということは、もちろんわかっています。ただ、最近はスタイルが良くないとなかなかはきこなすのが難しいかもしれない、という感覚もある。昔は普通にはいてきたので、不思議なんですけどね(笑)。
ほら、マーシーさんを見ていると普通に501をはきこなしているじゃないですか。そこで改めて『501ってカッコいいな』『自分もはきたいな』って思うんですけど、いざはいてみたら全然イメージと違って、途端に恥ずかしくなっちゃうんですよ」。
そんな菊池さんが今、頻繁に足を通しているのがリーバイスの551である。
「高校生になる娘と一緒に藤沢にある古着店へ行ったときに見つけたんです。古着自体、久々に買いましたね。娘がバンバン買うので、その勢いに背中を押されました(笑)。
このリーバイス 551のリラックスフィットのテーパードレッグは、形が抜群にいい。一発で惹かれました。脚を通すと余計に形のよさが実感できます。綿100%で、おそらく古着といっても割と最近のものだと思うんですけどね」。
そんな一本に合わせるアイテムも、やはり黒で統一している。
「質感の違う黒をあえてミックスしたりするのが好きですね。同系色で合わせると、単調になったり、面白味にかけるケースもあります。でも、素材の違うアイテムを合わせることで、着こなしに変化が生まれるんです。
変化をつけるという意味では、シルエットでも同じことが言えますね。裾を切りっぱなにした細身のデニムに、ゆったりめなトップスを合わせながら、ほどほどにシルエットのギャップを作ると、さりげない抜け感や遊び心が表現できます」。
インディゴの王道デニムでは、あまりにも“デニム見え”して気恥ずかしさがあったり、なかなかイメージ通りにはきこなせないという引け目がある。
しかし、自然な風合いに色落ちした551のブラックデニムであれば、デニム気分を満たしながらも、大人のモノトーンコーデにもすんなりハマる。細すぎず、太すぎないシルエットもドンピシャだ。
しばらくご無沙汰でも、常に頭の片隅にはデニムがある……。そんなオーシャンズ世代の大人たちは、菊池さん流のデニム術から学ぶところが多いはずだ。