▶︎すべての画像を見る 革靴のサイズ選びは意外と難しい。オンラインショップでいつも通りに買ったものの、実際に履いてみると「サイズが合わない」という経験がある人は少なくないはず。
そんな失敗を未然に防ぐべく、今回は
レッドウィングの正しいサイズ選びを徹底解説。
リテールマネージャーの川口 憲太さんから、定番モデルの「
6 インチ クラシックモック(
#875)」「
アイアンレンジャー(
#8111)」「
ポストマン オックスフォード(
#101)」の特徴やサイズ感、お手入れ方法など、オンライン購入時にも役立つ基礎知識を教わった。
レッドウィングの歴史と人気の秘訣
創業者は、ドイツ出身でアメリカ中西部の北域・ミネソタ州レッドウィングシティで靴店を営んでいたチャールズ・ベックマン。
1905年、「一切妥協のない商品を売りたい」との使命に燃えた彼が14人の仲間とともに靴メーカーを立ち上げたのが、今日のレッドウィングの始まりである。
以後、主にアメリカ国内のさまざまな労働者の足下を支えるべく、「エンジニア・ブーツ」や6インチ クラシックモックの起源である「ハンティング・ブーツ」をはじめ、「ラインマン・ブーツ」「ロガー・ブーツ」「ペコス・ブーツ」まで、現在でもラインナップする傑作を数多く産出。まさに
今日のアメリカを作り上げた革靴メーカーと言っても過言ではない存在だ。
高品質で実用性にも優れる各モデルは、1970年代以降はファッションの分野でも注目を集めるようになった。今では「アメカジ」を語る上で欠かせないブランドとなっている。
「価格と品質とのバランスに優れ、革靴としては敷居が低めのブランドではないかと自負しています」(川口さん、以下カッコ内同)。
近年はメンズ以上にレディスの売上が急上昇中なのだとか。
「コロナ禍ですが、ガーデニングやキャンプなど、性別に関係なく屋外で『作業する』シーンが増えたからかも知れません。結果、耐久性があって長く使えるだけでなく、足をしっかり守って、しかもフィットするという、レッドウィングの特徴をより深く理解していただけるようになりました。
単なるファッショントレンドではなく、『レッドウィングを履くライフスタイル』が従来以上に浸透しているのでしょう。もちろん懐の深いモデルばかりなので、自由な発想で履いていただけたらうれしいです」。
レッドウィングのサイズ表記って?
レッドウィングはアメリカの革靴メーカーなので、「
US(
米国)
のメンズサイズ」が大きさの基準。日本ではこれを「日本サイズ表記」に便宜的に置き換えている。
具体的には、「
US8.0」は「
日本の約26.0」。
だが「
約」
と書いてある点を、どうか覚えておいていただきたい。理由は後述。
一方、同社のレディスは、USの“レディス”サイズを基準にしている。具体的には「USレディス8.0」が「日本のレディス約25.0」にあたる。たとえ同じUSサイズの数値でも、メンズとレディスではスケールが異なるので、この点はご注意を。
なお足囲は、
日本で展開するものについてはメンズではE(
アメリカでは気持ち広め)
とD(
アメリカでは標準)
があり、モデルによって異なる。一方レディスはB(アメリカでは標準・日本では狭め)のみの展開である。
モデルごとにベストサイズが変わって当然な理由
川口さんによれば、直営店でフィッティングの際、
まずは「
スニーカーで履くサイズの0.5下」
辺りから試着してもらうことが多いとのこと。
靴の種類が何であれ、
USサイズの数字は「
靴の中に入る足の長さ」ベースではなく、単に「
製造時に用いる木型の大きさ」
を示すので、その基準もブランドごとにバラバラ。それゆえにスニーカーの方が“ちょうどいい”と感じる「サイズの数字」が大きくなりがちなのだ。
「一般のユーザーの方が混乱するのも無理はないので、
直営店ではご試着いただく前に、お客様の足の大きさを器具で計測するサービスを行っています。
レッドウィングに慣れ親しんでいる方でも、自分の思うベストサイズと実際のベストサイズの大幅なギャップに気付いて驚かれるパターンは多々あります。細身の設計のレディスは、メンズ以上にその傾向が強いですね」。
さらにレッドウィングの革靴は、
モデルごとに木型のシェイプが大幅に異なる。これは
各モデルがその起源上「
それぞれの作業をリアルに行うのに最適化されている」から。
さらに、足囲の違いも絡む結果、モデル毎にベストサイズが変わる可能性はかなり高い。前項で日本サイズに「約」を付けたのもそのためで、だからこそ事前に計測することが望ましいのだ。
人気モデル3足のサイズ選びとお手入れ方法
それでは、レッドウィングで幅広い人気を誇る3モデル「6 インチ クラシックモック(#875)」「アイアンレンジャー(#8111)」「ポストマン オックスフォード(#101)」のサイズ感やお手入れ方法などをご紹介していこう。
レッドウィングの人気定番モデル①
6インチ クラシックモック (#875)
「6インチ クラシックモック(#875)」4万5870円/レッドウィング(レッドウィング・ジャパン 03-5791-3280)
1930年代から存在した同社のハンティング・ブーツを改良し、1952年に登場した8インチ丈ブーツ(#877)。そのシャフトを6インチ丈とやや短くしたのが、こちらの「6 インチ クラシックモック(#875)」だ。
特徴のひとつであるフラットな底面のトラクショントレッド・ソールは当初、狩猟の際に動物に気付かれないよう足音を立てにくくする目的で考案されたもの。
しかし、クッション性に優れるだけでなく、
底面に泥が付きにくく段差に足を引っ掛けるリスクが少ない点、さらには靴の中に雨や細かなホコリが入りにくい点も評価され、建設作業など他の現場でも愛用者が続出。気付けばアメリカのワークブーツを代表する存在になっていた。
1970年代にはファッション面でも注目され、ジーンズやTシャツと同様に「アメカジ」を語る上ではなくてはならない立ち位置を確立した。
ちなみに、「
アイリッシュセッター」の愛称は、行動をともにする猟犬を思わせるアッパーの色合いに由来。時代によって赤味を帯びたりオレンジ掛かったりと、革の色味が微妙に変化したことでも愛用者を魅了してきた。
堅牢さと実用性の高さも相まって、今日でも不動の人気を誇っているのだ。
6インチ クラシックモック(#875)は、0.5〜1.0小さいサイズが◎
6インチ クラシックモック(#875)、NIKEのスニーカーともに26.5(US8.5)
川口さんによると、6インチ クラシックモック(#875)は、
スニーカーの日本サイズから0.5、もしくは1.0小さいものを選ぶのが適切とのこと。
例えば、スニーカーで日本サイズ26.5をジャストで履く人なら、日本サイズ26.0=USメンズ8、もしくは25.5=USメンズ7.5でフィットすることが多い。
「この#875をはじめ、主にモックトウ(モカシン縫いを施しているつま先をレッドウィングではこう呼ぶ)のモデルに用いる23番木型は、厚手の靴下を履く前提で設計してあるので、つま先もしっかり高さを確保しています。そのため、
足入れが良くゆったりめに感じるので、スニーカーをデカ履きなされない方でも、日本サイズが1.0下がる場合もあります」。
写真は26.5(US8.5)を使用。ソール全長30.6cm/足囲29.4cm(編集部調べ)
6インチ クラシックモック(#875)のサイズ展開
メンズ:
日本サイズ22.0(US4.0)~31.0(US13.0)。ハーフサイズピッチだが、日本サイズ29.5(US11.5)と30.5(US12.5)はなし。足囲はE。
レディス:
日本サイズ22.0(US5.0)~26.5(US9.5)。ハーフサイズピッチ。足囲はB。
(メンズとソール等の仕様が若干異なる。「#3375」4万8290円)
【お手入れ方法】
シティユースで履くなら、年に1〜2回のお手入れで十分!
「この靴のアッパーに使われているオロ『レガシー』は、鞣す際に油分をたっぷり入れたオイルドレザーです。なので、まずは
純正のオールナチュラル・レザーコンディショナーやミンクオイルのような油分主体のものでのお手入れをおすすめしています」。
お手入れのタイミングは、革にしっとり感がなくなってからが頃合い。作業用に連日過酷な環境で用いるのならともかく、
ファッション的にシティユースで履かれるのであれば年に1~2回程度で十分とのこと。逆に
お手入れのやり過ぎは、必要以上に油分が入ってしまい、革が型崩れを起こしたり、カビを生やしてしまうケースもあるそうだ。
「オロ『レガシー』は革の銀面を生かしたフルグレインレザーなので、ケア用品の成分をしっかり吸い込みます。まさに過ぎたるは及ばざるがごとしですね。お手入れが大好きな方向けには、純正用品で成分があっさりめの『レザークリーム』という商品もご用意していますので、そちらをおすすめしています」。
レッドウィングの人気定番モデル②
アイアンレンジャー (#8111)
「アイアンレンジャー(#8111)」5万710円/レッドウィング(レッドウィング・ジャパン 03-5791-3280)
レッドウィングの本社があるアメリカ・ミネソタ州の北部には、「アイアンレンジ」と呼ばれる鉄鉱石の鉱山が連なる地域がある。そこで働く鉱夫=アイアンレンジャーたちがかつて履いていた靴をモチーフに、現代的にリファインしたのがこのブーツだ。
デニム姿はもとより、上手くコーディネートすればジャケパンと着タイ姿の足下にもキマる。そのためかレッドウィングでは今日、グローバルには最も売れている商品なんだそう。
デザイン上の特徴は、つま先に一文字状のステッチをあしらった「キャップドトウ」の意匠だ。ドレスシューズに多くある「ストレートチップ」と見た目は同じものの、こちらは足の指を守るためにつま先の先端にもう一枚革を上から被せたことに由来する。
レッドウィングでも創業当初は、この意匠のブーツが数多く製造された。やがて内部を鉄や樹脂の芯で覆う安全靴へと進化し、文字通り
ワークブーツの原点を味わえる一足に仕上がっている。
アイアンレンジャー(#8111)はスニーカーと同サイズか、0.5下が快適
アイアンレンジャー(#8111)、NIKEのスニーカーともに26.5(US8.5)
川口さんによれば、アイアンレンジャーは
スニーカーの日本サイズでいうと、0.5下げるか、同サイズを選ぶのがおすすめだという。
例えば、スニーカーで日本サイズ26.5をジャストで履く人は、このブーツだと日本サイズ26.0=USメンズ8となる場合が多い。しかし、日本サイズ26.5=USメンズ8.5、もしくは25.5=USメンズ7.5になる場合も間々あるとのこと。
「このアイアンレンジャーなど、主にラウンドトウのモデルに用いる8番木型は、レッドウィングの現行の木型の中では最も歴史のあるもので、ワークブーツらしいゆったりした履き心地に定評があります。ただし、
足囲がDと6インチ クラシックモック(
#875)
に比べ細身になるので、同じフィット感を得るにはそれより0.5サイズ上げて履かれる方が多いですね」。
写真は26.5(US8.5)を使用。ソール全長30.3cm/足囲28.7cm(編集部調べ)
アイアンレンジャー(#8111)のサイズ展開
メンズ:
日本サイズ24.0(US6.0)~29.0(US11.0)。ハーフサイズピッチ。足囲はD。
レディス:
日本サイズ22.0(US5.0)~26.0(US9.0)。ハーフサイズピッチ。足囲はB。
(「#3365」5万710円)
【お手入れ方法】
革の特性から、ちょっとした傷なら自然にリカバーされる
アイアンレンジャー(#8111)のお手入れは、基本的には前述の6インチ クラシックモック(#875)と同じで大丈夫と川口さん。
「この靴のアッパーはアンバー『ハーネス』と言って、その名の通り馬具に用いる牛革のレシピを応用したものです。鞣す際に油分をたっぷり入れるのは、6インチ クラシックモック(#875)のオロ『レガシー』と同じですが、表情が少し異なります。内側から押すと中に含まれる油分が移動して、そこだけ一時的に色が薄くなるのです」。
「油が走る」とか「プルアップ」なる表現もあるこの質感のおかげで、
ちょっとした傷なら革に浸透した油分でリカバーされ、いつの間にか消えてしまうことも多いそうだ。履きジワや消えない傷も、やがて彫りの深い表情に深まってゆく。だからこそ、過保護は禁物だが適切な頻度でのお手入れを欠かさないでほしい。
レッドウィングの人気定番モデル③
ポストマン オックスフォード (#101)
「ポストマンオックスフォード(#101)」4万2350円/レッドウィング(レッドウィング・ジャパン 03-5791-3280)
当初は郵便配達員だけでなく警官、それに鉄道の駅員のような「作業服ではなくネクタイ必着の制服」の着用義務があるワーカー向けに1954年に開発したもの。
この種の用途の靴をアメリカでは「サービスシューズ」と呼ぶが、やがて
USPS(
アメリカ合衆国郵便公社)
がこれを正式採用。全米の郵便配達員が履くようになったため、「ポストマン」の愛称が広まった。
他のレッドウィングの靴とは一線を画する、いかにも「制服」が似合いそうなスマートなデザインだが、クッション性・グリップ性に優れ、雨に強く長時間歩いても疲れにくいクッションクレープソールも、USPSが配達員に最適と判断する決め手となった。
しかもこのソール、アメリカの家には付きものの芝生を傷めにくい点も彼らに好評だったそう。
1960年にはアッパーが、雨水が靴の中に浸透しにくい
一枚革構造に改良された。それを通じ、ルックス的にも洗練度が増し、今日でも「スーツ姿にも難なく合わせられるレッドウィング」として根強い人気を誇る。
ポストマン オックスフォード(#101)はスニーカーと同サイズか、0.5下がフィット
ポストマン オックスフォード (#101)、NIKEのスニーカーともに26.5(US8.5)
川口さんによれば、このポストマン オックスフォード (#101)を快適に履く場合、スニーカーサイズでいうと0.5下げるか、同サイズを選ぶのがおすすめなのだそう。
例えば、スニーカーで日本サイズ26.5をジャストで履く人は、この靴は大概の場合、日本サイズ26.0=USメンズ8、もしくは日本サイズ26.5=USメンズ8.5でジャストフィットとなる。
「ポストマン オックスフォード(#101)に用いる
210番木型は、その本来の用途を踏まえドレス感も高く、レッドウィングの木型の中では最もスマートになっています。
しかも足囲がDと6インチ クラシックモック(#875)に比べて細身ですから、同じフィット感を得るには少なくともそれより0.5サイズ上げないといけませんね」。
写真は26.5(US8.5)を使用。ソール全長30.3cm/足囲27.8cm(編集部調べ)
ポストマン オックスフォード (#101)のサイズ展開
メンズ:
日本サイズ24.0(US6.0)~31.0(US13.0)。ハーフサイズピッチだが日本サイズ29.5(US11.5)と30.5(US12.5)はなし。足囲はD。
※このモデルのレディスは2023年の春頃に発売を予定している
【お手入れ方法】
革のしっとり感がなくなったら、乳化性のケア用品で補う
このポストマン オックスフォード(#101)について、川口さんは前述した2つのモデルとは異なるアイテムでのお手入れを推奨している。
「この靴のアッパーには、ブラック『シャパラル』という名の光沢を維持すべく、表面に塗膜を施しています。そのため、その塗膜に余計な負担を掛けない
乳化性のケア用品、具体的には純正のブーツクリームのようなものでのお手入れをおすすめしています」。
純正のものに限らず、乳化性の靴クリームには「無色(ニュートラル)」と「色付き(この場合は黒)」があるが、どちらでも構わないとのこと。ただし経年で色が褪せてきた場合は色付きのもので、光沢と色味の双方を補うのが好ましい。
また、お手入れのタイミングはしっとり感がなくなってからで良いのだが、6インチ クラシックモック(#875)などに比べると頻度はもう少し上がるようだ。
「いずれにしてもクリームの付け過ぎは禁物です。
片足でコーヒー豆2・3粒程度を靴全体にまんべんなく延ばしてブラッシングと乾拭きを施せば、十分効果が発揮できますので」。
レッドウィングのサイズの選び方をまとめると……
レッドウィングの代表モデルのサイズ選びについて、まとめると以下の感じになる。
・6
インチクラシックモック (#875):スニーカーの日本サイズの0.5か1.0小さいサイズを選ぶ。 ・
アイアンレンジャー (#8111):原則スニーカーの日本サイズより0.5小さいサイズを選ぶ。人により1.0小さい場合や、まれにそれと同じサイズが最適な場合もある。 ・
ポストマン オックスフォード (#101):原則スニーカーの日本サイズより0.5小さいサイズを選ぶ。まれにそれと同じサイズが最適な場合もある。
※革靴はいずれも26.5(US8.5)サイズの場合
つまり、モデルによりベストサイズが異なる可能性が高い。でも、どうかこれを欠点とは捉えないでほしい。むしろ、
レッドウィングが目的に応じて今日でも木型と靴を真摯にかつ的確に作り分けている証拠だ。
「今まで以上に通販に注力しているのも事実ですが、レッドウィングの靴を初めて買われる方や、そうでなくても初めてのモデルのサイズ選びに不安を感じる方は、お気軽に直営店に遊びにいらしてください。足をきちんと計測して、ベストな一足を提供しますので!」。
ちなみに直営店での計測の際には、
靴の「経年変化」も踏まえた上でのサイズ選びを行ってくれる。これは、レッドウィングの革靴の大半は底付けがグッドイヤー・ウェルテッド製法である点と密接に絡んでいる。
履き込むにつれて、靴の中底が足の形状に合わせて少し変形する(沈む)のがこの底付けの大きな特徴なので、それを見越したサイズ選びをしてもらえるのだ。
「それぞれの靴のアッパーの革の違いやお手入れ方法についても、ご来店いただければ詳しく説明いたします。実は
レッドウィングは、タンナー(
革の鞣し工場)
を自社内に有する世界でもごく稀な靴メーカーなので、靴の目的に応じたアッパーの革の作り分け、そして使い分けも隠れた魅力だからです。そのあたりも実物を見て触っていただいた方が、わかりやすいと思います」。
創業当時から大切に使われ続ける「ピューリタンミシン」を筆頭に、歴史的経験に裏打ちされた品質設計が際立つレッドウィングの革靴たち。ゆえに革靴の本質的な意味、すなわち「足を守る」そして「足の動きをサポートする」アイテムであることをどうか忘れずに、サイズを選んでほしい。