▶︎すべての写真を見る 普段履いている靴と同じサイズを選んでいるのに、どうもフィットしない。そんな悩みを解決すべく、今回は英国の靴ブランド「
クラークス」を訪問。PR担当の宮崎翔太さんに話をお聞きした。
同ブランドのロングセラーを集めた「クラークス オリジナルズ」レーベルの中でも、問答無用の定番4モデル「
ワラビー」「
ワラビーブーツ」「
デザートブーツ」「
デザートトレック」の特徴とサイズ選びを中心に、購入時に役立つ情報を徹底解説!
クラークス オリジナルズの起源と人気の秘密
イングランドの南西部にある小都市・ストリート(嘘みたいだが実在する地名)で、これまでシープスキンの敷物作りに勤しんでいたサイラスとジェームズのクラーク兄弟。彼らに大きな転機が訪れたのは1825年のことだ。
この敷物を活用して「室内履き」にできないか? と作ってみたところ、ただでさえソフトなシープスキンに加え、内側に羊毛が付いているおかげで足があまりに快適! 瞬く間に評判となり、手応えを得た兄弟は靴作り専門の企業を立ち上げた。これが今日のクラークスの起源である。
19世紀半ばには縫製用ミシンや底材をカットする機械を導入するなど、靴の大量生産時代を予言するかのような取り組みを開始。伝統的な英国の靴メーカーの中では、進取の精神が抜きん出ていた存在だったに違いない。
クラークスの真骨頂は、やはり「デザートブーツ」だろう。1950年に発売され、お堅いイメージだった革靴に新しい価値をもたらした、まさに今日のカジュアルシューズの元祖といえる。
デザートブーツ以外にも、カジュアル・コンフォート系の革靴に傑作やロングセラーが多いのも同社の大きな特徴だ。
「室内履きを起源とするメーカーだからか、『
履く』
と言うより『
足を包む』
感覚を大切にしたいという思いが、創業当初から今日まで設計思想にきっちり引き継がれています。現存する英国の既製靴ブランドとしては事実上、唯一の『ノーザンプトン周辺以外での創業』であることも、影響しているかもしれません」(宮崎さん、以下カッコ内同)。
クラークス オリジナルズのサイズ表記の読み方
まず覚えておきたいのは、クラークス オリジナルズだけでなくクラークスの靴全般が、基本的には
「UK(英国)のメンズサイズ」が基準であること。国内では、これを日本サイズ表記に便宜的に置き換えている。
具体的には、
「UK8.0」は「日本の26.0相当」となる。
また、同社のレディスは、UKの“レディス”サイズを基準にしている。具体的には
「UKレディス5.0」が「日本のレディス24.0相当」だ。同じUKサイズの数値でもメンズとレディスではスケールが全く異なるので、この点は注意しておこう。
なお足囲(ワイズ)は、「クラークス オリジナルズ」レーベルについては、日本で展開するものは基本的にメンズ・レディス共に2E(標準)である点も覚えておきたい。「クラークス」レーベルについては他の足囲で展開しているものもある。
スニーカーとの「サイズ設定」の根本的な違い
写真は、26.0(UK8)を使用
宮崎さんによれば、クラークス オリジナルズの靴は
基本的には「
スニーカーで履くサイズの0.5下」をおすすめしているとのこと。
これは革靴であれスニーカーであれ、
UKサイズの数字は「
靴の中に入る足の長さ」
をベースにしているのではなく、単に「
製造時に用いる木型の大きさ」
を示しているからだ。 そのため、同一のサイズ表記でも実際の靴の大きさはメーカーごと、いや同じメーカーであっても各モデルによって結構バラバラ。さらにはそれを日本サイズに置き換えているわけだから、サイズのズレが生じるのも当然なのである。
ズレの更に根本的な原因についても宮崎さんは詳しく教えてくれた。
「大抵の
スニーカーは『
アウトソールの長さ=外寸』
を基準に木型のサイズを設定します。一方、クラークスを始めとする
ドレス系を起源とする靴は『
インソールの長さ=
内寸』
を基準にそれを設定します。この違いは製法の違いなどが影響しているようですが、結果、たとえ同じ人が履いても双方の最適なサイズは、当然ながら同じにはならないんです」。
また、
スニーカーを「
デカ履き」
されている方には原則その1.0下がおすすめとのこと。
「より快適な履き心地を得るためには、やはりジャストフィットで履いていただきたいので。とはいえ……クラークス オリジナルズの革靴はアッパーに足あたりの良いスエードを用いているモデルが多いので、靴擦れが起こりにくいのも大きな特長です。
なので、やろうと思えばスニーカーのようにデカ履きも実は可能です。いずれにせよ、『履き心地重視』なのか、それとも『ファッション・カルチャー重視』なのか、双方の観点で選べるのもこのブランドの魅力だと思います」。
人気モデル4足は、基本0.5サイズダウンがおすすめ
さて、定番モデル「ワラビー」「ワラビーブーツ」「デザートブーツ」「デザートトレック」の4つを紹介していこう。宮崎さんによると、いずれも
普段ジャストで履いている靴のサイズより0.5下を選ぶと良いそうだが……。
トウの形状や靴紐の位置、好みの履き方によって選び方が異なってくるので、各モデルの特徴を詳しくみてみよう。
クラークスの定番人気モデル①
「ワラビー」
「ワラビー」2万5300円/クラークス オリジナルズ(クラークスジャパン 03-5411-3055)
クラークスでのデビューは1966年。独特な形状と足あたりの良さが、子供をお腹の袋に入れて育てるカンガルーを彷彿させたため、それに因んで命名された。日本では1971年から輸入が始まったが、初回の輸入はわずか40足だったらしい。
環境志向が高まり始めた時代の寵児として、革靴に権威や様式ではなく、あくまで快適性を求める層に浸透していった。その一方で、1980年代以降はレゲエやヒップホップのミュージシャンの足元を支える一足としても認知され始める。
レースアップ構造でありながらスニーカー以上に束縛感のない履き心地が、どちらの側にも評価されたのだ。
オブリークトウで足指が自然に伸ばせるワラビー
宮崎さんによると、ワラビーについては原則、
クラークス オリジナルズの標準的なサイズ選び(つまり0.5サイズダウン)で大丈夫とのこと。
例えば、
スニーカーで日本サイズ26.0をジャストで履く人なら、ワラビーは大抵の場合は日本サイズ25.5=UK7.5でフィットするそうだ。
「ワラビーはつま先が足指を素直に伸ばせる『オブリークトウ』の形状です。しかもモカシン構造、つまりアッパーの革を足底から包み上面で蓋をする構造なので、履き込むと次第にその側面がわずかに伸びる傾向にあります。
いずれにしても、
ジャストフィットでありながらリラックス感の高い履き心地が得られる一足なのは間違いありません」。
ワラビーのサイズ展開
メンズ:
日本サイズ24.0(UK6.0)~30.0(UK12.0)。ハーフサイズピッチだが日本サイズ29.5(UK11.5)はなし。足囲は2E。
レディス:
日本サイズ22.0(UK3.0)~25.5(UK6.5)。ハーフサイズピッチ。足囲は2E。
クラークスの定番人気モデル②
「ワラビーブーツ」
「ワラビーブーツ」2万6400円/クラークス オリジナルズ(クラークスジャパン 03-5411-3055)
こちらは同じワラビーでも、くるぶし周りが隠せるハイカット=アンクルブーツ形状のもの。アッパーの背が高くなった分、通常の(ローカットの)ワラビーに比べ気持ちスマートな印象にも映る。
ブーツといえば、どちらかというと秋冬の靴、という感覚を抱きがち。でもこのワラビーブーツは季節にはあまり関係なく履けてしまうのも事実。足に優しい履き心地であるばかりでなく、コバ周りが目立たないのでブーツにありがちなゴツい印象とは縁遠いからかもしれない。
圧迫感が少なく甲高さんにもおすすめのワラビーブーツ
宮崎さんによると、このワラビーブーツについても原則、
先述したクラークス オリジナルズの標準的なサイズ選び(つまり0.5サイズダウン)でOKだそう。
例えば、
スニーカーで日本サイズ26.0をジャストで履く人なら、ワラビーブーツは大抵、日本サイズ25.5=UK7.5でフィットする。ただし……。
「ローカットのワラビーとハイカットのワラビーブーツとの決定的な違いは、靴紐を結ぶ位置です。前者は足の甲ですが後者はそれより上、つまり足首の付け根で靴紐を結びます。
つまり、ワラビーブーツのほうが足の甲への圧迫感はより少ないので、例えば甲高の足の方にはこちらのほうがより快適に履けると思います。また、ハイカットなのでかかとのサポート力も普通のワラビーに比べて増します。つまり、脱げにくくなるので、あえてデカ履きされたい方にもワラビーブーツのほうがおすすめです」。
ワラビーブーツのサイズ展開
メンズ:
日本サイズ24.0(UK6.0)~30.0(UK12.0)。ハーフサイズピッチだが日本サイズ29.5(UK11.5)はなし。足囲は2E。
レディス:
日本サイズ22.0(UK3.0)~25.5(UK6.5)。ハーフサイズピッチ。足囲は2E。
クラークスの定番人気モデル③
「デザートブーツ」
「デザートブーツ」2万5300円/クラークス オリジナルズ(クラークスジャパン 03-5411-3055)
クラークスの4代目であるネーサン・クラーク氏が、第二次世界大戦中にビルマ戦線で見た同僚の靴をヒントに1950年に開発した、今日のカジュアルシューズの元祖とも言うべき大金字塔。20世紀の靴の歴史を語る上で欠くことのできない名作だ。
英国内では当初「こんな靴どうして作った?」と一笑に付されたものの、背水の陣で臨んだ米国市場で爆発的な人気を獲得。のちに評価が英国に逆輸入されたという、当時ならではのサクセスストーリーも有する。
ビジネスシューズでもアスリートシューズ(スニーカー)でもない、文字通りニッチな市場を開拓できたのは、創業時から進取の精神に富んでいたクラークスだからこそなのだろう。
登場から70年以上を経ても基本的な構造が不変であるばかりでなく、流行や国境を超えたさまざまなファッションに容易に溶けこませられる点でも評価が高い。
中にはイタリアの自動車メーカーFIATの中興の祖である故ジャンニ・アニェッリ氏のように、ダークスーツの足元にあえてこれを選んだ強者もいる。
ややタイトめなデザートブーツも、0.5下のサイズでOK
宮崎さんによると、デザートブーツも原則としては、
クラークス オリジナルズの標準的なサイズ選び(つまり0.5サイズダウン)で大丈夫だそう。
例えば、
スニーカーで日本サイズ26.0をジャストで履く人なら、デザートブーツなら通常は日本サイズ25.5=UK7.5でフィットする。
「デザートブーツはワラビーに比べると、履き心地がややタイトに感じる方がいるかもしれません。つま先の形状がより伝統的な『ラウンドトウ』であるのと、アッパーを下から上に包むワラビーとは対照的に、その端部を上から下に押し付けて底付けしている構造(ステッチダウン製法)だからです。
とはいえ、双方でサイズを変えるまでのレベルではないと思います。一般的な革靴に比べれば、『
足を優しく包む』感覚を遥かに得やすいモデルであることは確かです」。
デザートブーツのサイズ展開
メンズ:
日本サイズ24.0(UK6.0)~30.0(UK12.0)。ハーフサイズピッチだが日本サイズ29.5(UK11.5)はなし。足囲は2E。
レディス:
日本サイズ22.0(UK3.0)~25.5(UK6.5)。ハーフサイズピッチ。足囲は2E。
クラークスの定番人気モデル④
「デザートトレック」
「デザートトレック」2万4200円/クラークス オリジナルズ(クラークスジャパン 03-5411-3055)
前述したデザートブーツのアレンジバージョンとして1972年に登場したのがこちら。”Trek”とは要はハイキングのことで、それに用いる靴=トレッキングブーツをイメージして作られたもの。
かかと後方にはリュックサックを背負い、杖を持った”Trek Man”というイメージキャラクターが絵描かれているのも特徴だ。アウトドア志向が世界的に高まり始めた、当時らしい発想の作品である。
この”Trek Man”が全く別物として広まってしまったのが、レゲエカルチャーで名高い中米のジャマイカ。そのシルエットから思いついたのだろうが、「Bank Robbers=銀行強盗」なる物騒な別称とともにこの靴も人気を博してしまったのだ。
アッパーにセンターシームを有するユニークなデザインと共に、確かに一度見たら絶対に忘れられない。
足指に余裕、かかとにサポート力を感じられるデザートトレック
このデザートトレックも、宮崎さんによれば
標準的なサイズ選び(つまり0.5サイズダウン)で問題ないとのこと。
例えば、
スニーカーで日本サイズ26.0をジャストで履く人なら、デザートトレックなら通常は日本サイズ25.5=UK7.5でフィットするだろう。
「デザートトレックは履き口も鳩目の位置も特徴的で、どちらもローカットとしては高めの位置にあります。それにセンターシームのお陰でアッパーの前半分がわずかに吊り上がったような構造になるので、足の前半分は気持ち余裕があります。
一方で、後半分はサポート力を感じられる独特な履き心地になります。ワラビー系ともデザートブーツともまた一味異なる、面白いフィット感を楽しめますよ」。
デザートトレックのサイズ展開
メンズ:
日本サイズ24.0(UK6.0)~30.0(UK12.0)。ハーフサイズピッチだが日本サイズ29.5(UK11.5)はなし。足囲は2E。
レディス:
日本サイズ22.0(UK3.0)~25.0(UK6.0)。ハーフサイズピッチ。足囲は2E。
クラークスのサイズの選び方をまとめると……
クラークス オリジナルズの代表モデルのサイズ選びについて、まとめると以下の感じになる。
◎
ワラビー・ワラビーブーツ・デザートブーツ・デザートトレック、どのモデルであれ原則、スニーカーの日本サイズの0.5cm小さいサイズがおすすめ。
ただし、普段スニーカーをデカ履きしているなら1.0cm小さいサイズもアリ。 実に簡単明快なのだが、これはクラークスがワールドワイドに展開している世界最大規模の革靴メーカー・ブランドであることが密接に絡んでいるのだろう。品質の個体差を極小化すべく品質管理が徹底されていて、それが靴や木型の設計にも的確に反映されているのだ。
つまりは
どこの国のどのようなユーザーであっても混乱せずにサイズを選べるよう、細かな配慮がなされているわけである。
最後にクラークス オリジナルズの革靴の特徴を、宮崎さんはこのように語ってくれた。
「今回ご紹介した4モデルは、基本のものだけでなくアッパーにゴアテックスを採用したものやアウトソールをアレンジしたものなど、派生形もたくさんあります。そして、それぞれが同一ブランド内できちんと住み分けができていて、年齢や性別それに時代や国の違いを超えて評価を頂いているのがクラークス オリジナルズの強みです。
親子孫三世代で全く同じデザインの、でもディテールが少しづつ異なるモデルを履けるブランドはクラークスだけではないでしょうか。
足への優しさとサイズも含めた『
選びやすさ』を、もっと多くの皆さんに味わっていただきたいですね」。
最近は購入時に付いて来る飾り=フォブを靴紐に付けて履くのが流行り始めているクラークス オリジナルズ。「足を優しく包む」基本に忠実だからこそ、さまざまな表情を出せる革靴であることは確かだ。