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3位は男性シンガーソングライター・優里の「ベテルギウス」。2021年の首位だった「ドライフラワー」が5位と依然人気を誇る中、同曲をベテルギウスで超えてみせた。ストリーミングは2位、ダウンロード12位、カラオケも9位と多方面で強さを発揮している。

優里はYouTubeでカバー動画をはじめ、音楽以外の動画も精力的に発信している。ドライフラワーでファンになった層を取り込みつつ、新規ファンの拡大も続いているようだ。

「長く歌われること」もヒットの要素

なお、ドライフラワーは2年連続でカラオケ1位を獲得した。近年のカラオケは、新しい曲に出会い、拡散される場としての役割も果たしている。長く聴かれることに加え、「長く歌われること」もヒットの重要な要素といえるだろう。



そのほか、Official髭男dismは4位の「ミックスナッツ」をはじめ100位内に6曲を送り込んだ。Adoも『ワンピース フィルム レッド』の主題歌である「新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」(作詞作曲・中田ヤスタカ)を含め10曲を送り込む大活躍。Vaundyも6曲がランクインした。

一方、オーディション番組出身グループでは変化も見られた。BE:FIRSTKep1erINIがランクインしたが、JO1NiziUなどは100位圏外。育成段階から熱心なファンを獲得できるのが強みだが、リリース以降、継続してポイントを蓄積できない例もあった。上位進出には、聴き続けてもらう仕掛けや情報発信がうまく機能することが必須だ。

ビルボードの高嶋直子編集長はこう1年を振り返る。「ダンス系よりも歌中心の楽曲が売れた傾向があった。タイアップに加えてTikTok、オーディション系など、ヒットの種類は一段と多様化している」。

続く2023年のヒットはどうなるのか。ビルボード事業本部上席部長の礒﨑誠二氏はアニメタイアップからの飛躍に注目する。

アニメタイアップ曲には引き続き期待

「ネットフリックスなど、世界で同時に作品が見られるようになったことは大きい。中でもコンテンツがうまくいっているのはアニメで、世界を目指すチャンスが拡大している。ストリーミングによって海外の人も日本の楽曲を聴けるし、有力な事務所でなくても売れるチャンスがある」(礒﨑氏)。

実際、Adoの新時代はワンピースの人気とともに、Apple Musicのデイリーチャートで1位にランクイン、各国のチャートにもランクインするなど世界に存在をアピールした。アニメと協力できる点は日本の音楽シーンの強みのひとつだろう。

現時点で2023年のチャートに影響しそうなのは、Official髭男dism「Subtitle」(2022年27位)と米津玄師「KICK BACK」(同30位)の争いだ。両者ともタイアップの楽曲で、足元でもハイレベルな戦いが続いている。年間チャートでも上位進出が見込まれる。

また、2023年チャートからは、ルックアップ(パソコンによるCD音源の取り込み)の指標がデータ提供元の事情から廃止。ツイッターも廃止となる。ツイッターは熱心なファンによる意図的なツイートが原因の一つだった。「総合チャートに与える影響はさほど大きくない」(礒﨑氏)としているが、この変更には注目したい。

国内の音楽シーンはようやく、コロナ禍から立ち上がりつつある。アーティストのライブや音楽フェスも徐々に復活し、外国人アーティストの来日も決まるなど、正常化が進みつつある。

TikTok経由のヒットは依然として多く、アニメなどのタイアップも存在感を増している。フェス発のヒットも生まれるだろう。多様化、複雑化するヒットの流れを読み、どうファンに訴えかけるか。2023年も激しい戦いが繰り広げられそうだ。




田邉 佳介 =文
東洋経済オンライン=記事提供

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