▶︎すべての写真を見る 「あれっ、この香りって何だっけ?」。
ふと嗅いだ香りから懐かしい記憶が蘇った経験、きっと誰しもあるはず。だが今回紹介する香りは、この世の誰の記憶にも残っていない。なぜなら、現代には存在しない“いにしえの香り”だからだ。
開発者はパリのライフスタイルブランド「アスティエ・ド・ヴィラット(Astier de Villatte)」。
彼らが作り出したのは、はるか昔の伝説的な香りをモチーフにした3種の香水。なかには紀元前4000年に使われていた香油を表現したものまで含まれている。
世の中にはさまざまな香水が存在するが、実はどんな成分を使ってもいいわけではない。香水製造基準に適合しない、または禁止されている成分もあるのだ。
故に、いにしえの香りの再現も困難を極めたようだが、彼らは現代の技術と飽くなき探究心でやり遂げた。さっそく、それぞれの特徴を時代背景とともに見てみよう。
紀元前4000年の“キフィ”を再現した「ル・デュー・ブルー」
「トロワ・パルファン・イストリック LE DIEU BLEU」10ml 1万3750円、30ml 3万3000円、100ml 5万1700円/アスティエ・ド・ヴィラット(アスティエ・ド・ヴィラット伊勢丹新宿店 03-3352-1111)
「キフィ」とは、エジプトの宗教儀式で使われていた香油のこと。神聖な香りとして重宝され、当時は大人から子供、果ては動物にまで使われていたとされる。アイテム名となったル・デュー・ブルー(Le Dieu bleu)は「青い神」を意味する。
ハーブや樹液、樹皮、根の素朴な香りがベースとなっていて、リラックス効果も得られるそうだ。
紀元前3世紀、奪い合うほど流行した香水「アルタバン」
「トロワ・パルファン・イストリック ARTABAN」10ml 1万3750円、30ml 3万3000円、100ml 5万1700円/アスティエ・ド・ヴィラット(アスティエ・ド・ヴィラット伊勢丹新宿店 03-3352-1111)
こちらのネタ元は紀元前3世紀頃、古代イランに君臨していたパルティア王のために作られた香水「パルファン・ロワイヤル」。24種類以上のアロマを配合した高級品で、当時のローマ貴族たちの間で大流行。なんとか手に入れようとみんなが躍起になったようだ。
スウィート&ビターなマジョラム、フレッシュなアニスやグリーンノートが効いたカルダモン、バニラ系のアンバーな香りなどを複雑に表現している。
19世紀の作家、ジョルジュ・サンドが愛用した「レ・ニュイ」
「トロワ・パルファン・イストリック LES NUITS」10ml 1万3750円、30ml 3万3000円、100ml 5万1700円/アスティエ・ド・ヴィラット(アスティエ・ド・ヴィラット伊勢丹新宿店 03-3352-1111)
時は19世紀。パリ中のインテリとアーティストが集う豪華な宴で、夜更かしの常連として知られた作家、ジョルジュ・サンド。彼女の遺品としてわずかに残ったフレグランスを分析して再現したという。
レ・ニュイ(Les Nuits)は日本語で「いくつもの夜」という意味。きっとサンドは、この香りを纏って数多くの刺激的な夜を過ごしたのだろう。
バラのなかで最も香り高いダマスクローズの香りに、土や木を感じさせるパチョリ、フローラルなイランイランやベチバーなどを組み合わせた。ややスモーキーでレザーを思わせる香りとなっている。
10mlサイズの香水3種と本のセットになった「トロワ・パルファン・イストリックのコフレ」4万1250円/アスティエ・ド・ヴィラット(アスティエ・ド・ヴィラット伊勢丹新宿店 03-3352-1111)
いずれも歴史上の香りであって、現存する人類にはまったく馴染みがない。
でも、もし実際に嗅いで「あれ? 懐かしい……」なんて感じたら、もしかしたらその時代のDNAが細胞の中に組み込まれている、かも?
[問い合わせ]アスティエ・ド・ヴィラット伊勢丹新宿店03-3352-1111