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言葉③「大事なのは、何でもやってみてフィードバックをもらうこと。欲望を行動につなげること」


Q:読者にも「自分が何に向いているか分からない」「明確な目標が立てられない」という人は少なくありません。やる気はあるけど、どのように一歩を踏み出していいかわからない時、何かヒントやアドバイスはありますか?

やっぱりいろいろやるのがまず第一で、フィードバックをもらうのがその次。その2つは絶対な気がします。

その上で、「自分を知る」には2種類あると思っていて、自分は何をしたいかを知っているっていうのと、自分がどう見えているかを知っている。この2つが「反比例するんじゃないか」というぐらい私は違っていると思っています。

アスリートは圧倒的に自分が何をしたいかを知っている人が多く、自分がどう見えているかを知ってる人は少ないと思います。逆に社会は、後者を結構やる印象があるんですけど、自分が何をしたいかが分からないっていうパターンが多い気がします。

それは、転職とか違う環境で自分を試す経験をしないと見えてこないんだろうなと思いますし、結局いろいろやることと、フィードバックしかない気がしますね。

Q:まずは、興味を持ったことに素直に反応し、行動を起こすことが大事だということですか?

興味がないことはできないと思うんです。まずは、自分の興味があることをとにかくやってみる。そういう意味では、欲望を素直に出すことですかね。

やっぱり社会に抑制する圧力がありますし、自分で自分を抑制する力もすごく強いと思うので、それに抗って行動するには、好奇心とか「面白い」って思うものをベースに、もう少し純粋に行動することは大事だと思います。



 Q:目標な明確が必ずしもすべてではなく、目の前の「面白い」に興味を持つ道もあると?

要するに、いつ報酬を得ますか? ということなんです。目標を立てて達成した時に嬉しいというのは未来の報酬に向けて今を我慢するっていう、基本的にそういうモチベーションモデルですよね。もう1つ、「それをやっているのが面白いんだ」っていうのは、現在からとにかく報酬を得ようっていうモデルです。

前者の方は目標とか、社会的意義とか意味を未来からもらうモデルで、後者のモデルは好奇心モデルだと思います。それは、快楽主義に近いんですけど、自己探求と快楽主義も結構似てるんですよね。どちらがどうではなく、大きく分けると、好奇心や快楽型に振るか、意味や達成型に振るかなんだと思います。



Q:ここから先、為末さんが表現していきたいことを教えてください。

1つは「熟達論」という本を今書いていて、自分自身で全部最初から最後まで、構成も含めて書いた初めての本なので、それをまず世の中に出してみたいです。

もう1つは、学校じゃないんですけど、学習って本来は入学も卒業もないことなんじゃないかと思うんです。特に人間ですね。人間っていうのは興味深い。そこをみんなで面白がれるようなことができないかってずっと思っています。

塾みたいにしちゃうと変な感じになるので、もっと自然な感じでやりたいですね。福澤さんはどうやって慶應義塾大学を作ったのかとか、「そもそも、学校ってどうやって始まったんだろう」ということに、今、とても興味がありますね。




為末大(ためすえ・だい) 1978年(昭和53年)5月3日、広島市生まれ。広島皆実高から法大に進学。400メートルハードルで世界選手権で2度(2001年、2005年)の銅メダルを獲得。五輪は2000年シドニー、2004年アテネ、2008年北京と3大会連続で出場。自己ベストの47秒89は、現在も日本記録。2012年に引退し、現在は執筆活動や「Deportare Partners」代表、新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長など多方面に活動している。


記事提供:The Wordway

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