サトータケシさん「新しいオジサンカーの象徴?」
産業能率大学が発表している「理想の上司」が、毎年結構楽しみだったりします。第1回の1998年は、1位が長塚京三で、2位が野村克也。このふたりがスーツを着て、昔の四角いクラウンに乗っていたら似合うでしょう。
時は流れて2022年、理想の上司の1位がヒカキンで、2位はイチロー。このふたりは、昔のクラウンには似合わないけれど、新しいクラウンならハマりそうだ。
クラウンが変わったことが話題になっているけれど、それは世の中が変わっていることの証しだ。昔のビジネスパーソンは、ネズミ色のスーツで出社して、会社帰りは居酒屋か雀荘の二択だ。
ところが今はどうでしょう。朝イチでサーフィンをしたりジムでワークアウトしてから、デニムで出勤するなんて人はザラにいる。ファッションを含めたライフスタイル全般が変わりつつあって、それが新型クラウンに影響を与えた。
ここから話は飛躍しますが、新しいクラウンがこんな形になったのは、つまりはオーシャンズのせいではないだろうか。おかげでオッサンが格好いいオジサンになって、素敵な大人に似合う車が必要になった。
この車が生まれた背景には、オーシャンズの存在があるのだ、といっても過言ではないだろう(いえ、過言です)。
| モータージャーナリスト サトータケシ フリーランスのライター/編集者。この原稿を書きながら、「ヒカキン、イチロー……。振り返ると、自身のペンネームをカタカナにしたのは、我ながら先見の明があった」と自画自賛している。 |
西川 淳さん「概ね歓迎ムード」
クラウンは現存する国産車のなかで最も伝統のある車名だ。なにせトヨタの“冠”だから、そう簡単に諦めることはできない。
とはいえ売れなくなれば、何らかの対策が必要だろう。伝統を重ねたら文化になっていくけれど、文化だけで食っていけるほどメーカービジネスはラクじゃない。
販売台数が全盛期の10分の1にまで落ちていた。ここ数年、いろんな “変化”をアピールしたが、その声がユーザーへ十分届いていたとは言い難い。ならばいっそ“変身”してみたらどうか? 鶴の一声が開発陣を突き動かす。
そうして誕生した新型はどこをどう切ってもよく知る“クラウン”じゃなかった。
それゆえ、街中を流しているとスーパーカー級の注目を浴びる。みんな知っているのだ。クラウンが大変身したことを。どうやら歓迎ムードが勝っている。売れ行きも好調。
車としてデキがいいと感じたのは、やはり価格の高いRSグレードだった。力強い走りはトヨタのフラッグシップに相応しい。ただし乗り心地では廉価グレードの装備する19インチタイヤのほうがベター。RSに装着された21インチは少々お硬い。見てくれは圧倒的に後者のほうがカッコいいのだけれど。
詰めの甘さは残る。けれどもポテンシャルは高い。この先の派生モデルも楽しみ。
| モータージャーナリスト 西川 淳 フリーランスの自動車“趣味”ライター。得意分野は、スーパースポーツ、クラシック&ヴィンテージといった趣味車。愛車もフィアット500(古くて可愛いやつ)やロータス エランなど趣味三昧。 |