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RS 
私はライターとして、文章のリズムや流れに悩むことがあります。写真家であるミシナさんがいちばん悩むのはどんな部分ですか?

MM 編集です。撮影中は、何ひとつ逃したくないので大量の写真を撮ります。でも、すべての写真を取り入れようとすると、「ここでのストーリーは何? どんな枠組みにすべき?」と思えてくる。撮影当時を振り返ったとき、どこに思い入れを持つかはわかりません。編集は、ストーリーが浮かび上がってくる段階です。

例えば、1日一緒に過ごしてあなたの行動をすべて写真に残したとします。そこから最終編集で選ぶ写真によって、100万通りのあなたを描き出せるのです。編集段階で、撮影した時間に戻って、ストーリーを最終的に確定させることができます。そのために、ストーリーをいちばんうまく支えられる写真を選ぶ。これは本当に難題です。



RS どういうことですか?

MM 最初に誰が言ったかは覚えていませんが、ポートレートには必ず3人の人物がいるという言葉があります。被写体、写真家、そして写真を見る人です。3人とも、出来事に対して別々の思いを持っています。それぞれが違った解釈をしているのです。

本質的に、写真とは三者の関係で成り立つ記録であり、見る人によって発展・変化します。1枚または複数の写真を選ぶことは、見る人のストーリーの受け取り方に影響します。それは、被写体や写真家の持つストーリーと同じかもしれないし、違うかもしれません。



RS ミシナさんが心から憧れるスタイルはありますか?

MM 自分とは全然違うスタイルや手順を持つ人ですね。例えば、フランク・オッケンフェルスさん。セレブリティやミュージシャンのポートレートをたくさん撮っている写真家です。彼は同じ人物を何度も撮影するのですが、毎回まったく異なる姿を引き出していて、刺激を受けます。視点が違うのですね。

オッケンフェルスさんの写真は、技術的に完璧というわけではありません。ピンぼけや傷のせいで、締まりのなさや不正確さを感じる人もいるでしょう。ですが、彼の写真からは何かが伝わってきます。目に見えるものではなく、感じたものをつかみ取る――それこそが重要だと思います。だから私は光が好きなのかもしれません。



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※このインタビューは長さと読みやすさを考慮して編集しました。

レイ・ソジョット=文 ミシェル・ミシナ=写真
加藤今日子=翻訳

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