また、実家の近所にある温泉施設で早朝の掃除アルバイトを始める。
「開店前に掃除をしてから大学に行く感じで。一緒に働いていたおじいちゃん、おばあちゃんにかわいがってもらいました。卒業で辞めるときは、馴染みのおじいちゃんから『地元の熊本の馬刺しだよ』と言われて餞別をいただきました」。
かくして、新卒でトレンド・プロに入社。大学3年生の秋に「漫画を作る」というインターンを知って応募したのがきっかけだ。
「家には父親の趣味で手塚治虫の漫画しかなかったんです。『ブラックジャック』がいちばん面白かった。大学に入るまではみんなが読んでいる『ジャンプ』とかは知りませんでしたが、それ以降はいろいろ読んでいます。広告はアート系に走っているものが多いけど、漫画は『伝えたい』という率直な感じが素敵だなと思っていました」。
主な仕事は冊子やチラシの中の数ページの漫画を作って納品すること。営業担当者から上がってきた案件をもとにクライアントの意向を聞いて、シナリオを書き、漫画家をセレクトし、上がってきた原稿をチェック、クライアントに送って、というやりとりののち納品に至る。
過去の作品がずらりと並ぶ。
「漫画家さんから上がってきたネームを見て、お客さんが強調したい部分が伝えられているかな、コンプラ的に大丈夫かな、表情をもう少しこうしたほうが映えるな、セリフこういう言い回しのほうが良かったかなとかをチェックします」。
美佐希さんが入れた赤字。
一方で、「いいね!」と思ったところは「GOOD JOB!」を戻す。
これが「青ペン主義」。
そんな美佐希さんを推薦してくれたのはクリエイティブ部のディレクター、絹巻玲奈さん。
「美的センス、クリエイティブに対するセンスがすごい。演劇をやっていたので、そこから来る思慮深さとか演出力もあるんでしょうね。
社内の流れとしてはクライアントさんからオーダーが来てから伝えますが、早川さんは事前の資料を見て『作っときました』」と仕事を進めてくれます」。
同期ながら「尊敬している」という絹巻さん。
内線の「用件は何だ!」というゴルゴ風の男はゴルゴではなかった。
「朝日新聞の広告特集企画でさいとうたかを先生に描いていただいた『亜佐日十三』というキャラクターなんです。新聞、アニメ、ウェブの連動企画として話題になりました」と絹巻さん。
美佐希さんに思い入れが深い漫画を教えてもらった。
探しています。
「これ、私が担当した最初の頃の仕事です。運送会社の教育漫画で、ドライバーさんの働き方、こういう意識を持って働きましょうという内容。ページが多かったのでネームが得意なライターさんにお願いしました」。
「あなたが荷主なら、どんなドライバーに配送を依頼しますか?」という想いを訴える漫画。
美佐希さんの赤ペンと青ペンを経て世に出た。
そんな彼女、ハマっているのは社交ダンス。18歳でバレエを辞めてから、もう一回ダンスをしたい、ひとりじゃない踊りをやりたいという思いがあった。
パートナーがあってのパフォーマンスだが、ダンスに対しての誠実さを常に求めているという。
やはり踊り続けたい。
では、最後に読者へのメッセージをお願いします。
登録の漫画家さんは約2000名とのことです。
[取材協力]トレンド・プロhttps://ad-manga.com