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でもって、ローレルへの“オマージュ具合”が絶妙!

とにもかくにもローレルは、そんなセイコーの記念碑的モデルなので、これまで何度かオマージュの元ネタとされてきた実績もあるわけだ。

で、こちらが「セイコー プレザージュ」のアニバーサリーモデルである。

採用したモチーフは、もちろんローレル。いや、かなりそっくりだぞ、これは。

ラウンドシェイプに玉ねぎ型の大きなリュウズを備え、当時のデザインを再現した鹿革製のストラップも付属する。9時位置のパワーリザーブは現代的なアレンジ。45時間のパワーリザーブをもつ自動巻機名キャリバー6R27を搭載している。

ラウンドシェイプに玉ねぎ型の大きなリュウズを備え、当時のデザインを再現した鹿革製のストラップも付属する。9時位置のパワーリザーブは現代的なアレンジ。45時間のパワーリザーブをもつ自動巻機名キャリバー6R27を搭載している。


アラビア数字も当時のオリジナル書体を忠実に再現し、サブダイヤルの線路型目盛、そしてブルーの針(鉄を焼いて青く仕上げる古典的技法を、現代ではPVD加工で再現)によって、そこはかとなくクラシカルなムードを醸している。加えて、ストラップデザインの再現性も非常に高い。

つまり、ビジュアル面において、かなり忠実に再現されていることがおわかりいただけるだろう。

実は、これまでに行われた数回の“ローレルオマージュ”モデルたちは、モダンさが重視されたせいか、ここまで外見を似せることをしてこなかったのだ。

そして、最大の注目点は、琺瑯ダイヤルにある。



初代ローレルでも採用されていたダイヤル素材であるが、もちろん本作にも使用されており、深い味わいがある色みがおわかりいただけるはずだ。

琺瑯とは、金属の上に釉薬をかけて高温で焼成することで、その表面にガラス質のコーティングがなされる技法である。大別すれば、腕時計の文字盤の仕上げとしては今や高級の部類に入るエナメルの一種。

古くは一般的なものだったが、セイコーにおいても、生産効率やコストの観点から琺瑯ダイヤルは、やがて他の表面加工に取って代わられることに。

ところが、日本のクラフトマンシップを重んじる「セイコー プレサージュ」が、1947年から続く富士ホーローとのコラボレーションによって、琺瑯製のダイヤルを復活させて以降、俄然注目度が高まってくる。



理由は、その監修を手掛ける琺瑯職人、横澤 満さんの仕事ぶりゆえだ。

名門、富士ホーローで、40年近く琺瑯の生産に携わっている達人が、塗布面の厚さ0.01mmほどの仕上がりの違いをも見極める卓越した眼力で、文字盤に最適なツヤを与えているのだ。

ページを遡って、もう一度ミュージアム所蔵の「ローレル」オリジナルを見ていただきたいのだが、琺瑯ダイヤルは、およそ110年の時を経ても劣化するどころか、深みが増しているわけで、こちらの時計でも同様に琺瑯の魅力を、時間をかけて発揮してくれることだろう。

「12時」の赤文字もアイキャッチとなるが、実は、「4時」のアワーマーカーもよく見ると“ヒゲ”の付いた特徴的な書体が使用されており、愛着も湧きやすい。

「12時」の赤文字もアイキャッチとなるが、実は、「4時」のアワーマーカーもよく見ると“ヒゲ”の付いた特徴的な書体が使用されており、愛着も湧きやすい。


セイコー プレザージュと富士ホーローのコラボレーションダイヤルは、セイコーファンのみならず時計ファン、さらには「メイド・イン・ニッポン」のクラフトファンならば、一目置く存在。



そんな名品は、通な御仁にはもちろん、ロマン溢れるこの一本から時計趣味を始めてみるなんていうのも、かなりセンスフルだと思うのだ。


[問い合わせ]
セイコー腕時計110周年記念限定モデル 特設サイト
www.seikowatches.com/jp-ja/products/presage/special/110th_enamel/

髙村将司=文

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