現役医師が開発するアプリ「キュア・アップ」が、ソフトウェアで治療そのものを“再創造”する

キュア・アップ 代表取締役CEO兼医師 佐竹晃太さん Age 40●1982年、神奈川県生まれ。医師として国内で呼吸器内科に従事したのち、2012年より中国および米国の大学院に留学。帰国後、’14年にキュア・アップを設立。 コート12万6500円／メゾン ミハラヤスヒロ　03-5770-3291、シャツ5万9400円／ビズビム　03-5468-5424、パンツ2万6400円／エストネーション　0120-503-971

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「無地の白シャツにシンプルなジャケット。普段はこのスタイルでほぼ固定しています。変えない理由は、一貫性と誠実さを求められる事業だから。医師が着る白衣のような感覚かもしれません」。

キュア・アップのCEOを務める佐竹晃太さんは今も週1回白衣を着用し、日本赤十字社医療センターの呼吸器内科で診療を続けている。ビジネスパーソンであると同時に現役の医師でもある。

手掛ける事業は、治療用アプリの開発。よくある健康管理アプリと大きく異なる点は3つある。1つ目は、臨床試験を経た医学的エビデンスに基づくものである点。2つ目は、厚生労働省により薬事承認され、保険適用が利くという点。そして3つ目は、医師が疾患を診断して患者に処方するという点だ。

つまり、我々が今まで慣れ親しんできた“医師が処方する薬”と同じ位置づけとしてアプリが機能する。現在の主力サービスは、ニコチン依存症と、9月1日から医療機関による処方が開始された高血圧治療用アプリである。

2014年7月に設立した「キュア・アップ」。治療用アプリを開発する。’20年8月、ニコチン依存症のアプリで薬事承認を取得、同12月に保険適用開始。’22年9月に高血圧症のアプリが保険適用となる。現在日本国内で保険適用される治療用アプリはこの2つのみ。そのほかアルコール依存症、脂肪肝、慢性心不全、がんの治療用アプリの研究・開発を進める。

生活習慣病の治療はよくマラソンに例えられる。例えば高血圧であれば、降圧剤を毎日飲み続け、食事や運動によって数値の改善を図っていかねばならない。大げさではなく人生を通じて治療を続けていくものだ。

高血圧治療用アプリの具体的な機能は、毎日の血圧測定と個人に合わせた生活習慣の指導。これに医師による月1回の診療を組み合わせる。6カ月の短期集中プログラムだが、この期間にも大きな意味がある。

「人間は同じことを3カ月続けると習慣化し、さらに3カ月続けると考え方の変化が定着するといわれています。高血圧を治したいのに具体的な方法がわからず、降圧剤を飲み続けることになる人が多くいる。

このアプリを使うことで、投薬治療の先にある、永続的な生活習慣の改善が見込めるというわけです」。

国内の高血圧患者の人口は実に約4300万人（日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」）に上るという。我々の健康寿命を力強くサポートしてくれるこの高血圧治療用アプリは、あらゆる人の伴走者となり、日本を活性化させる一端を担うに違いない。



今後は、生活習慣病を中心にさまざまな疾患に対応するアプリを展開していくという。

「医師として直接患者さんを診療し続けることで、私自身が『困っている人を救いたい』という気持ちを新鮮なまま持ち続けられています。

このモチベーションで、臨床現場の進化はもちろん、医療格差や医療の空白、医療費の高騰といった社会的課題も解決に導いていきたい。ソフトウェアで治療を“再創造”していきたいのです」。