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NFTにもなるドリフトマシン

 
ルノー5(サンク)は、実用車である4とは異なり、核家族時代のコンパクトカーとして登場した2ドアハッチバック車。中身は4を踏襲したのが、デビュー直後から大ヒットし、何度もヨーロッパのベストセラーに輝いた名車だ。

そんな5が電気自動車として2024年に復活することは、既に2021年に発表されている。

そこにきて今年のパリモーターショーに、5をベースとした往年のラリーカーの名車「5ターボ」を彷彿させる「R5ターボ3E」がお披露目されたのだ。



「ドリフトのために設計された」というこの車は、5ターボ2の後継であることを示す「3」と、電気自動車であることの象徴である「E」を合わせた「3E」が名前に付けられた。

全長はわずか4mなのに幅は2mを超え、巨大なリアスポイラーくを備えたやる気満々のボディにふさわしく、後輪をモーターで回すと静止状態から100km/hに達するまでわずか3.5秒、最高速度は200km/h超という性能が与えられている。
 


一方で「ゲームのような世界感を数多く取り入れた、超ハイテクなデザイン」と言う通り、アナログメーターが10個も備えられたサンクターボに習い、10個のデジタルスクリーンがステアリング奥に備わる。

またスタートさせるには「Free Play」ボタンを押し、用意されているドライビングモードの名称も「Turbo」(ドリフト)、「Track invader」(プレイ)、「Donut」(360度スピン)と、遊び心満点。

おや!? 助手席に黒いテディベアの姿もある。「ドリフティ」と名付けられた彼は「R5ターボ3Eが本気でないことを示す演出」だという。



……そう。残念ながらこのR5ターボ3Eの市販化の予定はないらしい。ただし、仮想ゲームの世界で活躍することが想定されていて、今どきなNFT(Non Fungible Token)のコレクションも用意される予定だとか。

まあ、ドリフト専用マシンを我々がこぞって買うことはないだろうが、まずは2024年に登場する電気自動車の5を楽しみにしておこう。

2024年に登場予定の5(手前)と、往年の名車5(奥)

2024年に登場予定の5(手前)と、往年の名車5(奥)。


躍進するダチアの「公約」としての一台

ダチア「マニフェスト」

ダチア「マニフェスト」


最後はダチアの「マニフェスト」。

ダチアはルノー傘下のルーマニアのメーカーで、近年特にヨーロッパ市場で快進撃を続けている。例えば同社を代表する車「サンデロ」の2021年のヨーロッパでの販売台数は、同じクラスの王者であるフォルクスワーゲン「ゴルフ」に次ぐ2位だ。

人気の理由は、ルノーや日産の技術や部品をうまく使うことで、ライバルに対して安く、それでいて高品質で、デザインも良いことにある。

そんなダチアがパリモーターショーで放ったコンパクトなコンセプトカー「マニフェスト」は、その車名の通り「我々の成功を築いた価値と品質を拡大しながら、アウトドア志向の高まる顧客の側に立つというブランドの目標を示す」というダチアのマニフェスト。



4輪で走るこの電気自動車は「シンプルでリアルな体験を提供する」ために、ドアも窓もフロントガラスもない。アウトドアを楽しむなら自然の中に身を置こう、というわけだ。

夜になったらヘッドライトをひとつ外して、トーチライトとして活用することもできる。パンクに強いエアレスタイヤを備え、車高をグッとあげて、悪路走破性も申し分なし。

また電気ポットなど家電を屋外で使う際にはバッテリーから電気が取れるらしい。外はもちろん、車内もホースで水をザッとかけて洗える防水性もある。



そうはいっても原始時代に逆戻りするつもりもない。

現代のマストアイテムである「スマホ」を車内にビルトインさせれば、カーナビアプリや音楽アプリが使えるようになるし、将来的にはスマホをキーデバイスとした多様なサービスを提供することも検討しているらしい。

まだコンセプト(マニフェスト)ゆえ、詳細は未定だが、確かにヨーロッパで人気のメーカーだけあって、見た目はグッド!

このテイストを継いだモデルが、同社らしく低価格なら日本でも販売してほしいところだが、今のところ同社の車が日本に正規輸入される予定はない。



確かにルノーと日産、三菱自動車と同じグループのメーカーが小さな島にひしめく日本ゆえ、ダチアの付け入る隙がないのかもしれないけれど、近年の快進撃が続けばいずれ日本にも!? 

まずはこのコンセプトカーとともに“ダチア”の名を覚えておこう。

籠島康弘=文

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