染めでよみがえる大切な思い出。洋服に込められた想いも大切にしたい。
「服とヒトのサステナブルなお付き合い」を後押しすることで、モノを大切にする暮らしの輪を広げたいという井澤さん。こんな思い出を教えてくれました。
「あるブラウスを染め直したお客さまがいました。若いころにお母様とイタリアに行った時に買ってもらったブラウスで、お母様は40代で他界、ご本人は現在70代でしたが、亡き母に買ってもらった最後の形見と、捨てられずに持っておられたそうです。
染め直したものをお届けすると『すっかり見違えました。また母から新しい物をいただいたようで、こんなに素敵によみがえるとは本当にうれしいです』と、とても喜んでいただけました」
何十年も大切にしていた思い入れの深い洋服のエピソード。この話を聞いた井澤さんは、染め直しの価値を再認識したと言います。
「思い出も一緒によみがえらせることが染め直しの魅力。単純に、捨てられてしまうかもしれないお洋服を減らすことができることは、サステナブルの観点からもちろん重要です。
ただ、お気に入りだったお洋服をもう一度着ることができるという価値もまた重要なように思います」
今よりもっと染め直しが浸透し、クリーニングに近いような選択肢になればと井澤さん。
染め直しを体験!手作業で洋服の魅力がよみがえる。
実際にどのような手順で染め直しを行っているのでしょうか。井澤さんに編集部メンバーの洋服を染め直していただきました。
STEP1.準備
洋服の汚れは染めムラの原因に。手間暇はかかるものの、外せない工程
まずは、きれいに染めるための準備から。洗剤を混ぜた80度のお湯で、30〜40分ほど洗います。これによって普通の洗濯では落としきれない皮脂汚れをしっかり落とします。
この薬品は染めを助ける役割を持つことから「助剤」と呼ばれているそう
STEP2.染める
色味には並々ならぬこだわりが。染料の配合は試行錯誤で決めたとのこと
染料をお湯に溶かします。今回は〈SOMA Re:(ソマリ)〉のスタンダードなプラン「黒染め」を実施。黒い染料単体で染めると青みがかってしまうため、複数の染料を混ぜ合わせるのがソマリ流。
汚れを落とした洋服を脱水機にかけてから、いよいよ染めの工程へ。Tシャツであれば、染めにかかるのは1時間ほど。途中で取り出して、さらに2種類目の助剤を入れます。
洋服同士が重ならないように注意
水から80℃まで温度を上げながら染める
STEP3.洗い
染めあがったら取り出して洗います。
余分な染料を落とす作業。これをやることで他の洋服への色移りを避ける
STEP4.染め・乾燥
その後、冷水でしっかり洗った後、取り出して乾かせば、黒染め作業は完了です。
染めを終えたTシャツ。一度の染めでムラなく染まる
STEP5. 完成
今回、〈SOMA Re:(ソマリ)〉さんにて黒染めしたTシャツやカットソー。プリント部分は染めが入らず、また全く新しいデザインとして生まれ変わった