2020年の春ごろから、池上は本格的にアパレルブランド立ち上げの準備に入った。もちろん最初に開発に取り掛かった商材はジーンズ。サーキュラーエコノミーの実現を掲げた「land down under」の構想が固まっていった。
「ジーンズを製造する時点から、後々リサイクルがしやすいように設計しようと考えました。国内にそのようなジーンズはなかったので、これなら私がやる意味がある、と決意しました」
こうして2021年1月に、land down underが誕生した。
“傷モノ”のデニム生地を活用
サーキュラーエコノミーの実現にあたり、池上がこだわるのがジーンズのデザインの工夫だ。
ジーンズをリサイクルするためには一度ワタ状に戻し、そこからもう一度糸を撚り直す必要があるが、金属のリベットやポリエステルのタグなどの付属品を取り除くコストがかかってしまい、ビジネスとして成立させるのが難しい。そこで、フロントの金属ボタンと縫い糸1箇所以外は、縫い糸やタグまですべて綿にこだわった。
また、工場に在庫として残されてしまった“傷モノ”のデニム生地を活用することで、ロスの削減に貢献している。
工場ごとに定めた規定数以上のキズが見つかると検品の際に「B反」と判断されるが、実際はわずかな傷や糸の混入があるだけで素人目には気にならないものがほとんど。
ところが、例えばland down underが提携している工場でも、旧式シャトル織機(現在も人気の50~60年前のモデル)で織られるセルビッチデニムだけで、毎月約300〜400mほどの“傷モノ”ができる。これはジーンズに換算すると約160本分にも及ぶ。
残反は、一般流通に乗らない生地だが、だからといって安く仕入れていては工場にとってのメリットは少ない。持続可能性と工場の負担を減らすという観点から、生地の仕入れ値は製造原価を下回らない価格に設定している。
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