「星の数ほどある病気のなかで、予防ができる病気は限られている。とくにがんは予防できるものは少ない。ぜひ、異常を見逃さないようにしてください」と今野さんは言う。
ASTは肝臓以外の臓器、心臓や筋肉、腎臓や膵臓などにも多く存在する。そのため注意が必要だ。山登りや筋トレをした翌日に測ると、筋肉からASTが大量に出て数値が上昇し、肝機能が見かけ上、悪く評価されることがある。健診の前にこのようなことをするのは避けたほうがいいだろう。
受けておきたいオプション検査とは
さて、特定健診にはこれまで紹介してきた必須の項目のほかに、「医師の判断に基づいて実施するオプション検査」がある。
それが、「貧血検査」と「心電図」「血清クレアチニン検査」、そして血清クレアチニン値をもとに算出される「eGFR(推算糸球体濾過量)」「眼底検査」の4項目だ(労働安全衛生法による法定健診には、貧血検査と心電図が含まれている)。
今野さんは、「貧血検査は医師の診察時に、めまいや立ちくらみの症状を訴えた人や、まぶたの裏(結膜)が白っぽいなどの兆候を医師が見つけた場合などに、追加されます。
心電図は不整脈の自覚のある人、眼底検査は血圧が高い人などにすすめられます。受診者の訴えが検査を追加する判断につながるので、普段、気になる症状があれば、正直に伝えたほうがいいです」とアドバイスする。
②貧血検査 貧血の検査はメタボリックシンドロームや生活習慣病とは、直接関係ないが、「特定健診以前に実施されていた『老人保健法』に基づく基本健康診査では必須項目でした。多くの項目が削られるなか、それがオプションとはいえ、残された。それだけ重要な検査だと考えます」と今野さん。
貧血の検査項目には「ヘマトクリット値」「血色素量」「赤血球数」の3つがある。
ヘマトクリット値は血液中に赤血球が占める割合(%)で、基準値は成人男性で40~50%、成人女性で34~45%。血色素量は赤血球に含まれるヘムタンパク質(ヘモグロビン)の量を示す。男性は基準範囲が13.1~16.3g/dl で、女性が12.1~14.5g/dl 。赤血球数は男性400~539(×10⁴/mm³)、女性 360~489 (×10⁴/mm³) が基準値だ。
貧血の程度は通常、ヘモグロビン値で判断し、貧血の種類は赤血球数やヘマトクリットとの組み合わせで算出される指標(MCV、 MCH、 MCHC)で判断するという。
月経のある女性に貧血が認められる場合、鉄欠乏性貧血であることが多い。貧血になるとめまいや息切れが起こるが、慢性的に鉄欠乏が起こっているとそうした症状に慣れてしまい、異常に気付きにくい。婦人科疾患(子宮筋腫や子宮内膜症)が原因で貧血が起こっていることもある。
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