デビューとともに高い評価を得た「イッセイ ミヤケ」は、その後、50年近くにわたって確固たる地位を維持してきた。長きにわたってこれだけの評価を得るブランドは、ほんの一握りに限られる。
1977年、三宅氏は1976年度毎日デザイン賞受賞している。建築家やプロダクトデザイナー、グラフィックデザイナーなどの受賞が多い同賞において、衣服デザインの分野では初の受賞として注目を浴びた。
さらに、三宅氏が生み出した「A-POC(エイポック)」は、2000年にグッドデザイン賞の大賞を受賞している。これも衣服では初だった。アパレルという領域をやすやすと越え、デザインという幅広い領域で、多面的なクリエイションを重ね、それが賛同や評価を得た結果と言える。
未来を透徹するようなまなざし
私は、グッドデザインの審査会や、2007年に六本木に開設された日本初のデザインミュージアム「21_21 DESIGN SIGHT」のプレス発表の場などで、何度か姿をお見かけしたことがあり、三宅氏のアトリエで一度、お話しさせていただく幸運も得た。
ものすごく緊張してうかがったのだが、穏やかで温かい笑顔で迎え入れていただいたことは、濃い記憶として残っている。
話は、ファッションのこと、デザインのこと、日本のもの作りのことなど、多方面に及んでいった。中でも印象に残っているのは、未来を透徹するようなそのまなざしだった。
「これからを担っていく若い才能を後押ししていきたい」「日本の財産ともいえるもの作りが続いていけるよう応援したい」「服に限らず、デザインの持っている広く深い価値を伝えていきたい」といった思いが込められていた。
やさしい語り口ながら、あふれるような愛情がほとばしるように伝わってくる。社会や世の中に向けた広く深い眼差しを持っている方と、改めて感じ入ったのを覚えている。
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