ソーシャルインテリア CEO 町野 健さん Age 48●1974年、東京都生まれ。上智大学大学院修了後、日本ヒューレット・パッカード入社。2016年にカマルクジャパン(現・ソーシャルインテリア)を設立。好きなアーティストはレディオヘッド。
▶︎すべての画像を見る デザイン性の高い家具や家電のサブスクリプションサービスを提供する「サブスクライフ」。必要な期間だけ家具が使えることや、長く使い続けても家具の定価を超えない価格設定が魅力だ。
「日本で職人が作った家具を使うことを一般的な“文化”にしたい」。
そう語る町野健さんは、事業を始めたきっかけを自身のジレンマだという。
「職人がまじめに作った家具は高額で手が出しにくいが、安価な量産家具は使いたくない。そう考える人は少なくないはずです」。
調査をするうちに、日本では高価な家具は売れていないことがわかった。町野さんは、家具職人が儲からず、大量生産の家具が使い捨てにされている現状を改善したいと考えるようになった。
「いいものを長く使うことができれば、より業界がサステナブルになる。成功すれば、大企業が支配的な家具業界に革命を起こせると考えました」。
「ソーシャルインテリア」ではライフスタイルの変化に合わせて、必要なときに必要な分だけ人気ブランドの新品の家具やデザイン家電の利用を1個、月額500円から始めることができ、使い終わったら回収までサポートをするというサービスを提供。利用期間を延長して継続利用することも可能で、使ってみて気に入った家具や家電は購入することもできる。
仕事への原動力は地位や名声、お金ではなく、自らの信条だった。
「僕は“革命”を信条としています。このビジネスはインテリア業界の革命になる。チャレンジすることがモチベーションです。
そして、衰退しかけている日本の職人家具の業界で『売り手良し』『買い手良し』『世間良し』、いわゆる三方良しなプラットフォームをつくりたいんです」。
同社の売り上げは毎年3倍に増えている。
「コロナ禍もあり、日本人も住環境に注目し始めたことが理由のひとつでしょう。出来のいい服であれば高額でも世間に“良い”ということを伝えれば響きますよね。家具でもそれが受け入れ始められているのだと思います。
もうひとつは環境意識の変化です。若い人ほど良品を長く使うことに目を向けていると感じます」。
ビジネスで実現させたいのはいろいろな意味で人が豊かになること。
「良いものが長く循環する社会で、家の中やオフィスはもちろん、ユーザーの心が豊かになることを目指しています。実現すればメーカーにもお金が入るようになって、今よりももの作りに集中できる。
うちが旗振り役になることで循環する社会をつくっていければと思っています」。
今回着用した「ネイル」のデニムは縦横に伸びる生地を使用することで、はき心地の良さを追求している。飽きのこない定番シルエットで何十年もはき続けられるサステナブルなデニムを標榜しており、生産時に出る排水を通常より多い3段階でろ過することで環境に配慮している。「はきやすくてびっくりしました。脚が太いので合わないデニムが多いのですが、これはシルエットもきれいに出るし、僕にとっては理想のデニムです」。デニム2万9700円/ネイル(エストネーション 0120-503-971)、Tシャツ2万9700円/ユナイテッドアローズ(ユナイテッドアローズ 原宿本店 03-3479-8180)、スニーカー9万3500円/ジェイエムウエストン(ジェイエムウエストン 青山店 03-6805-1691)
そんな町野さんの普段のファッションは、ジルサンダーの同じカットソーを複数枚所有して着回している。
「10倍の値段のものを使うと、50倍気持ちいい。それは、家具でも同じです。家で過ごす時間も50倍気持ち良くすることができる」。
日本の家具文化を豊かに変えていく男の姿勢は一貫している。