当記事は「星野リゾート」の提供記事です。元記事はこちら。 星野リゾート代表・星野佳路が立教大学現代心理学部の教授・小口孝司とメンタルヘルスツーリズムについて対談。
今回は後編をお届けします。(
前編、
中編はこちら)
旅は人が生きていく上で必須のもの
星野 先生の研究も含め、サイエンティフィックな研究が普及してくれば、旅行の必要性がもっとはっきりしてきますね。旅行が自分たちの生活の大事な一部だという感覚を持ってもらいたい。
このWithコロナ期に悩んでるのは「不要不急の外出は止めてください」と言われること。今の話の流れで言うと、旅行は不要不急なものではないですよね。
小口 旅行は必須なものだと思いますよ。
星野 それには参加していない人たち、参加しづらい人たちに目を向けることも必要ですね。「旅行は贅沢だ」という発想をもつ人たちを取り残すわけにはいかないから。
小口 旅行に行くことに対する罪悪感という研究も行っています。他の人たちが仕事をしているのに私一人だけ行っていいのか、と。自分がいないことによって仕事に支障があるのではないか、などという罪悪感があるのです。
それはシステム的にも変えていかなければいかないし、能力が向上するのだという事実も伝えていかないといけない。「旅に出ていなくなることもお互い様」という意識も入れないと、いつもその罪悪感によって抵抗が生じてしまいます。
星野 ストレスを軽減するとか、メンタルヘルスを保つというのは、けっこう重要なことじゃないですか。これまでバブル崩壊、リーマンショックとか大震災とかいろいろあったのですが、予想以上に観光需要は底堅いのですよ。意外に必要なものに位置付けられているのではないかと、直感的に思いますけど。
小口 お金があったらあなたは何をしたいですか、という質問をすると一番上に来るのが旅行なんです。
星野 それだけ旅行に行きたいというのは、なんとなく、ストレスとか、メンタルヘルスを実感しているということなのでしょうかね。
小口 おっしゃるとおりです。旅は多くの人にとって生きていく上で必須なものだと思います。
Withコロナ期の新しい旅、メンタルに良いマイクロツーリズムのすすめ
星野 今は新型コロナウイルスの影響で、ストレスは溜まってるし、ますます疲れは出ているし。ちょっと近くに旅行するのがメンタルヘルスには効果的だと思うのです。
小口 こういう時期だからこそ、旅の価値は高くなりますね。
星野 昔は、うちの温泉旅館に東京などから人が来るのは夏休みだけだったのですよ。それ以外の季節は地元の方たちが多かったですね。30分~1時間くらいの距離から来て、日頃食べない贅沢な料理を食べて温泉に入る。上げ膳据え膳で過ごしたいというニーズがあった。
小口 疲れが溜まっているときは近くで癒す、というストレスケアですね。
星野 そうですね。ですから疲れた時にはどんどん旅に出てもらいましょう。
小口 その場合でも、疲労しきっているときには、近くがいいのです。たとえば沖縄にある星野リゾートの「星のや竹富島」には行けないのですよ。
星野 どうしてですか。
小口 すごく疲れている人は長距離移動が難しいので、東京から100キロ圏内くらいの、星野リゾートでいうと「界 仙石原」や「リゾナーレ熱海」とか、東京近郊で癒すことになるでしょう。
少し元気が出てきたら遠くに行って、竹富島に行って、もっと元気が出てきたらバリへ行く。そういう段階があるのです。疲労の大きさと最適な旅の距離とは反比例すると考えています。
大涌谷温泉の露天風呂を全室に完備した「星野リゾート 界 仙石原」。
星野 なるほど。ではすごく疲れきっている人には、近場の温泉がいいですね。県境をひとつ越えるくらいの。
実は今、30分~1時間位の移動で旅をするマイクロツーリズムに力を入れているところです。Withコロナの時代ですから、感染拡大せず、地元の魅力を発見しながら、新型コロナウイルス疲れを癒してもらう。
小口 それは生活において必須の旅と言えそうですね。
星野 まぁ、県境なんかなくてもいいと思うんだけど(笑)。
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