特に理由はないのに、ついついスマホを触りすぎてしまう。そんな癖が付いてないだろうか。
「長時間スマホやPCを使う生活を続けていると、脳内にダメージを与えて認知症に近い症状を引き起こすことがあります。この状態を“
デジタル認知症”と呼んでいますが、コロナ禍でその数は増えています」。
そう話すのは、浅川雅晴 医師だ。もはや他人事とは言えないデジタル認知症の正体について詳しく話をうかがった。
話を聞いたのはこの人! 浅川雅晴●精神科医。うつ病やパニック障害、不眠症などを診療する浅川クリニックの院長。近著に『「スマホ」という病』(KKロングセラーズ)など。
デジタル認知症の原因は“脳疲労”
同じ姿勢で画面を見ていると、肩は凝るし目もショボショボしてくる……。デジタル機器の使いすぎが体に良くないのは何となくわかるが、それが認知症につながるのはなぜだろうか?
「現時点で、デジタル機器が認知機能を低下させることを裏付けた医学的根拠はありません。ただし、スマホの使いすぎでもの忘れがひどくなるなど、何らかの障がいを感じている人がいるのは確かです。それを、わかりやすくかつキャッチーに
デジタル認知症と称するようになったのでしょう。
メカニズムはこうです。まず、スマホやPCの画面を長時間見ると目が疲れます。すると、目から直結している脳中枢を刺激して、脳が疲労を起こします。その結果、脳のパフォーマンスが下がり、もの忘れやミスをしてしまう、といった感じです」。
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取引先との約束の時間を忘れてしまう ・
1時間で終わっていた仕事が2時間もかかる ・
金額を一桁間違えて書いてしまう といった症状が出てきた場合は要注意だ。
「脳疲労がピークになると、海馬が体を守るためにヒューズを一時的に飛ばし、数秒単位ですが
記憶喪失が起こることもあります」。
スマホの使いすぎは生活習慣病と深い関係アリ
©️gorodenkoff/iStock
一度もの忘れがひどくなったとしても、
デジタル機器を使うのをやめれば脳はもとの状態に戻るという。
「今はデジタル機器と認知症の因果関係は証明されていませんが、そもそもスマホが普及し、四六時中画面を見る人が増えたのは最近のこと。今後、何らかの関係が発見されることもゼロではないと思います。
とういうのも、生活習慣病は認知症のリスクを高めると言われていますが、スマホやPCの使いすぎは生活習慣病と密接な関係があるからです」。
寝る前にスマホを使うことで、体内時計を調節するメラトニンの分泌が低下し、睡眠の質が下がる。ゲームや動画を見る時間が増えて、その分運動しなくなる。加えて、
食生活も乱れると先生は指摘する。
「特に独身男性に多いのが、
スマホを見ながらひとりで食事をしているケース。画面に集中することで、食欲を抑制する脳の中枢神経のはたらきが鈍くなり、過食気味になってしまいます」。
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