映画『キングダム2 遥かなる大地へ』で蒙武役を務めた俳優/モデルの平山祐介さん。
過去2度にわたり、原作ファンの彼に
好きな武将や
名シーンについて聞いてきたが、物語により深みや幅を持たせ、味わいを加えてくれるのは脇を固める好敵手や仲間たちの存在である。
平山さんの心にリーチした、そんな秀逸なバイプレーヤーたちを今回はピックアップする。
▶︎すべての画像を見る ※以下の内容は、コミックス版『キングダム』のネタバレを含みます。 [PROFILE] 平山祐介●1970年生まれ。オーシャンズ看板モデル。俳優としても活躍し、ドラマ『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』(日テレ系)、『今際の国のアリス』(Netflix)、映画『ミッドナイトスワン』など数々の話題作に出演。現在公開中の映画『キングダム2 遥かなる大地へ』では蒙武役を熱演した。
王騎の存在感を際立たせた“武”の求道者
編集部 好きなキャラクターとして
王騎、蒙武、桓騎の3名を挙げていただきましたが、彼らのほかに頭をよぎった武将はいますか?
平山 何人もいますよ(笑)。
パッと浮かんだのは龐煖(ほうけん)。僕が空手をやっているというのもありますが、彼の生き様からは、武とは何か、強さとは何かをすごく考えさせられました。武道の達人と呼ばれる方々は、意外と龐煖的な考え方の人も多いと思います。
編集部 そうなんですか!?
平山 映画『イップマン』をご覧になった方なら分かるかと思いますが、昔はひとりで部屋に篭って武道を極めるケースが多かった。みんなで一緒に練習をしてしまうと、技を盗まれてしまいますから。
編集部 なるほど。
平山 一子相伝のような文化があって、ひとりで鍛錬を重ね、それが正しいかどうかを見極めるべく、たまに外に出て腕に覚えのある者と手合わせをするんですよ。
編集部 まさしく龐煖そのもの。
平山 その道は苦しいでしょうし、孤独でもある。でも、ただただ”武”を追求するために生きるそのストイックさには共感します。一方で王騎たちは龐煖に対して「一人きりの世界に答えなどない」と説く。果たしてどっちが正解なのか、刃を交えた武将同士のやり取りは興味深いものがありますね。
編集部 結局、龐煖は王騎を倒し、その後、王騎の矛を譲り受けた主人公・信と何度も戦い、朱海平原の戦いでついに決着をみます。
平山 王騎や信と刃を交えるたび、龐煖は明確な答えを見出せぬまま再び山に篭ります。ただ、巻を追うごとに、龐煖が武人として最強を目指し、高みへ到達せんとする理由が明確になっていくじゃないですか。
編集部 「人の救済」ですね。
平山 そうです。ただ強くなりたいのではなく、人を救いに導くための武の追求なんですよね。龐煖は「人の代表」なのだと李牧(りぼく)が語りますよね。
編集部 そうですね。少し難解ですが。
平山 人を超え、神に近い領域に立つとき、我々人は上の存在に変化し、争いを止め、苦しみの世から完全に解放されると、龐煖は本気で信じていると。その背景を知って、龐煖に対する想いが少し変わりました。
編集部 ずーっと謎の男として描かれてきていましたからね。
平山 強さを目指しているのかと思いきや、実は人の模範となるような存在になることで戦争をなくそうとしている。秦王とは違った方向で平和を求めたのだと知ったとき、龐煖を応援したくなったんですよね。彼も不器用な人だったんだって思います。
編集部 彼の真意を知ったあと、龐煖vs.王騎を見返すとまた違って見えるかもしれませんね。
平山 そうなんですよね。最強を目指すという意味では蒙武と一緒なんですけど、まったく毛色が違うなと。
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