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細部に宿る「服としての格好良さ」

 

見た目に反して驚きの軽さを誇るチノパンツ。素材は綿58%、紙42%。軽快な着心地でありながら、フロントのボタンフライやコインポケットなど、アメカジ好きも納得の本格的ディテールを備える。1万8700円/ワクロス エッセンシャル(MNインターファッション www.wacloth.com


SDGsが17の目標、169のターゲット、232の指標に細分化されているとおり、サステナブルには多種多様な形がある。ワクロスの服から垣間見えるサステナブルもまた、ワクロスならではの形であった。

和紙という日本独自の文化へのオマージュ。職人の技術に対する敬意。もの作りをつうじて深まる相互理解。その服は単なるプロダクトではなく、服に関わるすべての人々を有機的につなぐ、ハブのような存在なのだ。

「もちろん改善していくべき課題も多々あります。第一に価格が高いこと。工程が多いので当然そうなってしまうのですが……。

素材も然りで、手間がかかるため大量生産が難しい。そしてカスタマーに対する発信、アプローチもまだまだ未熟だと感じています」(米﨑さん)。

 

蒸れ知らずのスウェットは紙と綿、ポリエステルのミックス素材。ゆったりとしたシルエットが今っぽい。1万7600円/ワクロス エッセンシャル(MNインターファッション www.wacloth.com


さて「サステナブルにはさまざまな形がある」と書いたばかりで恐縮だが、オーシャンズで取材を続けてきた“サステナ服”にはある共通点がある。

それは単純に「服として格好良い」こと。サステナブルという属性を取り除いても思わず手に取りたくなる、大いなる魅力を備えているのだ。

いいものはいつか必ず売れる。そして多くの人々に認知されるに従って、抱える課題も必ず解決されていくはずだと信じたい。

最後に、ワクロスの服としての純粋な特徴をひとつ書いておきたい。それは細部の仕上げの良さだ。

一例を挙げよう。真冬以外スリーシーズン着ることができそうな、紙×コットン素材のステンカラーコートがある。そのサイドベンツの仕上げが見事なのだ。

深く切られたベントにはそれぞれ4つのボタンを配置。そう、季節や着る人の好みに合わせて、ベントの開き具合を細かく調整できるのだ。大きく開けば、紙糸で作られた軽量な裾が、より軽やかになびく。

こうした細部の出来に、服好きはひそかにうならされるのである。

WA.CLOTH ESSENTIAL ワクロス エッセンシャル
創業年:2020年12月
本社所在地:東京都港区
従業員数:830名(2022年6月時点)

Sustainable Keywords
・紙糸をベースにしたカラダと環境に優しい繊維を開発
・耐摩耗性に優れた長持ちする服
・日本の職人の技術力にフォーカス

(※)和紙:実は、和紙の原料や漉きの工程に明確な定義はない。ここでは漉きによって植物の繊維を絡めて作った紙を和紙とする。

川西章紀=写真 加瀬友重=編集・文

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