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 シンプルな作りで皆を楽しませる。という共通点



新婚旅行などで何度か訪れたアメリカには、山麓の街には必ずと言っていいほど、ブルーパブ(醸造所が併設されたビアスタンド)があったという。

そこには下山後に泥だらけのまま立ち寄って、隣に居合わせた誰かとその日の山行の駄話を分かち合うカルチャーが根付いていたのだ。

アウトドア好きにとって、これほど楽しいことはない。



「だから高尾で、下山後に美味しいビールが飲めるところを誰か作ってくれないかと、ずっと思っていたんですよ。でも、誰もやらなかった(笑)。だから、仕方なく自分で」。

この思い切りの良さは、旧型ジムニー乗りに共通する気質かもしれない。

メンテナンスや維持のことを考えると二の足を踏む向きもあるだろうが、それよりも自分の「好き」「面白そう」のプライオリティのほうが高いのだ。



「アメリカのクラフトブルーイングビジネスの通信教育を受講して、2017年に酒造免許を取得しました。

力仕事で大変な面もありますが、やりがいは大きいですよ。水と麦と酵母というシンプルな原料で作られたもので、皆がハッピーに酔っ払ってくれるのが面白い。

コミュニケーションのハブになるものを自分の手で生み出せているって、なんだか不思議な気分です」。



もともと誰かを喜ばせるのが喜びという性分なのだろう。

今では「ビールが出る車を指名してのイベント出展の誘いが多い」というが、そもそも池田さんがこのジムニーをビールが出るように手を加えたのは、まだ高尾ビールを立ち上げる前だ。



「特に不満点もないので、まだしばらくは乗り続けるでしょうね。強いて言えばタップの数をあと3口は増やしたいかな」と、根っからのビール好きのコメント。



そのために、ビアスタンドのトレーラーを作って牽引できるよう仕込んでいるところなのだとか。

趣味でも仕事でも切り離せない「ビールが出る車」は、いい大人が心から遊べる大事な相棒なのである。



小澤達也=写真 礒村真介(100miler)=取材・文

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