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「よろしくお願いします」。

「よろしくお願いします」。


こちらは三浦和美さん。施術を受けている(風)なのは、なんと和美さんのお姉さん。撮影用のモデルになるために、仕事を早く上がって駆けつけて来てくれた。美しき姉妹愛だ。

仕事の話を聞く前に、和美さんの半生を振り返ってみよう。お生まれはどちらですか?

「埼玉県の三郷市です。小学生の頃は友達が住んでいる大きいマンション内で鬼ごっこをして遊んでいました。広いからなかなか捕まらないし、公園とかよりスリルがあって盛り上がるんです」。

中2のときにお母さんの実家がある草加市に移り住む。

「あまり記憶がないんですが、友達と近所のガストに集まってトランプゲームをしていたのは覚えています。ドリンクバーではコーラをひたすら飲んでいました」。

面白いエピソードもあった。

学校の三者面談で担任の先生から「将来は何になりたいの?」と聞かれた和美さんは「お金持ちと結婚して玉の輿に乗ります」と答えたというのだ。隣に座っていたお母さんは恥ずかしそうにしていたという。

そんなお母さんとは今でも仲がいい。それぞれ別々に暮らしているが、年に1回ぐらいの頻度で家族の女性3人で出かけるそうだ。

横浜中華街にて左からお姉さん、和美さん、お母さん。

横浜中華街にて左からお姉さん、和美さん、お母さん。


その後、和美さんなりに勉強し、制服がかわいかったので入りたいと思っていた高校に合格した。「高校で頑張ったのはこれぐらい」と言うのは文化祭。実行委員に立候補して渾身のお化け屋敷のプロデュースをしたそうだ。

修学旅行は例年沖縄だったが、和美さんの学年だけ、なぜか長崎になった。平和祈念像などを見学して、自由行動はカラオケボックス。長崎らしいスポットにはほぼ行っていない。

しかし、覚えているのはホテルではなく民家に泊まったこと。

「5人1グループでおばあちゃんが住んでいる家に泊まりました。やさしくてちっちゃくて、とてもいい人で、かわいいシーズー犬と一緒に広い家に住んでいました」。

別棟にカラオケルームがあって「夜、カラオケやる?」と誘われた。浜崎あゆみを熱唱。当時はあゆ派と倖田來未派に分かれていたという。

高校卒業後はいくつかのアルバイトを経て、越谷レイクタウンのアクセサリー屋で社員として働き始める。

「ディスプレイの面替えも任せてくれて、すごく楽しかったです。見せ方ひとつで売り上げが全然変わるんです。やりがいがあったので飽きっぽい私が5年も続きました」。

当時の和美さん。

当時の和美さん。


この頃から、ゆくゆくは独立してプライベートサロンをやりたいという夢が芽生えていた。しかし、ネイルはスクール代が高い。いろいろと探してたどり着いたのが、現在の増毛エクステだ。

「その当時、増毛エクステのスクール代は今よりも安かったのと、独立しやすい業種かなと思いました。さらに、社風が自由でネイルも髪色も制限なし。社内の人もお客様も、とにかくみんな人がとってもよかったんです」。

このような技術研修を経て現場に出る。

このような技術研修を経て現場に出る。


同社のエクステは従来のものとは異なるオリジナルの手法で、1本の自毛に4〜6本の人工毛を結び付けるというもの。人工毛は軽いため、頭皮や自毛に負担を掛けることもないという。

図解するとこんな感じです。

図解するとこんな感じです。


常に大量に持ち歩くという繊維で作られた人工毛。

常に大量に持ち歩くという繊維で作られた人工毛。


このあたりは美容師の仕事道具と同じだ。

このあたりは美容師の仕事道具と同じだ。


「大手と比べて料金が圧倒的に安いというのが当サロンの特徴。また、技術力に関してもどこにも負けない自信があります」。

なるほど、思ったより安い。

なるほど、思ったより安い。


やはり、お客さんの多くは男性なんでしょうか。

「いえ、約7割が40代、50代の女性なんです。子育てが手から離れて、自分のためにお金も時間も使える年代。増毛エクステは薄毛に長年悩んでいる人がやっとたどり着く場所なんです」。

美容師さんだと軽いトークをしながら、客のイメージを実現する仕事。しかし、増毛はコンプレックスを抱えた客の話を聞きながら、デリケートな悩みを解決する仕事だ。

「見せたくない部分を見せに来てくれるわけなので、軽い感じのノリにはできません。頭髪を見せたくないから何十年も美容室に行けない。カットも自分でやる。極端な場合は薄毛が気になって外に出られないという方もいらっしゃいます」。

温泉に入ったときにバレたくないから友達と旅行にも行けない。そんな悩みの改善を、来店当日にビフォーアフターとして実感してもらえるのが増毛エクステ。泣いて喜ぶ人も多いそうだ。

「『三浦さんが担当じゃないとイヤ』というお客様も多いため、信頼関係が生まれて、かなり深い間柄になります。人によって踏み込んだトークをしてもいい方とそうじゃない方がいるので、繊細なさじ加減も必要。想像以上にナイーブな仕事です」。

なお、和美さんは技術力と人気を買われて、この4月から栃木県の宇都宮、小山、佐野の3店舗のFCオーナーになった。

宇都宮店の店内。

宇都宮店の店内。



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