──課題とは? 和田:前述の通り、WIT STUDIOは設立から10年で原作もののアニメ化はしっかりつくれるようになりました。ただ、ゼロからイチを生み出す力がまだ圧倒的に足りません。特にデザイナーが不足している。
──デザイナーとは、どんな分野の? 荒木:すべての、ですね。キャラクター以外にもメカや街の造形、建物、そして企画。
和田:原作のアニメ化だと、すでにキャラクターがある、物語もある、世界観もある、背景もある。キャラクターの大まかな造形も「いただいたモノ」だったんだと改めて思いました。
WIT STUDIO代表 和田丈嗣
荒木:ゼロイチでつくるためには、デザイナーがスタジオに常駐する必要があるんですよね。多くのアニメ制作環境では、監督にしろ演出にしろプロジェクトごとにチームが組織されます。ひとことで言えば、用事がある時に声がかかるスタイル。
才能がある人ほど忙しいので、時間のかかるオリジナル作品をつくる際に声をかけても、いいメンバーが集められないこともある。
IPが強い企業はデザイナーさんが「常駐」しているような気がします。WIT STUDIOでもオリジナル作品を生み出す体制をつくっていく必要がある。
和田:荒木さんの言う通り、アニメづくりの常識を変えていかないといけない。
──例えば、それが雇用体系にも反映されるということでしょうか? 和田:そうです。いまは、出版社が原作をつくって、アニメ制作会社がそれを映像化するという分業で、アニメ界全体として最適化されていますが、これからは自社内で企画から制作までを担える体制を整えていかなくてはいけない。
また、組織として作品数を絞り、プリプロダクションに時間を掛けていくことも、これからのスタジオビジネスには必要なことだと思います。もちろん、この戦略を支えられる経営体力をつけることも重要です。
(c)2022「バブル」製作委員会
──「バブル」に挑戦したことで、次の10年も見えてきたと。 和田:そうですね。一度、Netflixで認知と間口を広げ、劇場で大規模公開に踏み切り、一番遠くを目指して打った先の飛距離を見たかった。その結果、自分たちが、次に行きたい場所に行くための課題が明らかになりました。
荒木:収穫ありましたね。
和田:アニメーションの需要がもっと増えていくにあたって、スタジオ側もどんどん強くなっていかないと。「バブル」は次の10年への一歩とも言える作品になったと思っています。