OCEANS

SHARE

ユーミン、松原みき、竹内まりやの王道3曲に見て取れる女性像は?

シティポップで歌われる恋愛観は、それまでの歌謡曲やフォークにおける湿っぽい感覚ではなく、もっとライトでアメリカナイズされたものと言ってもいいだろう。

とはいえ、そこには時代感や日本的な要素も感じられる。

松任谷由実「ルージュの伝言」(松任谷由実 CONCERT TOUR 宇宙図書館 2016-2017)

荒井由実「ルージュの伝言」が収録されたアルバム『COBALT HOUR』。


例えば、シティポップの代名詞でもあるユーミンこと荒井由実(松任谷由実)。

松任谷由実「ルージュの伝言」


彼女の代表曲のひとつであり、ジブリ映画『魔女の宅急便』でも使われた「ルージュの伝言」('75年)の歌詞を見てみよう。
advertisement

この曲の女性は、浮気症の彼氏にお灸をすえるために、彼のママに会いに行くという設定だ。

オールディーズ風の軽快な曲調やポップな言葉遣いからすると“幼い感覚のカップル”、といった感もあるがそうではない。

彼と彼女は親公認の同棲、もしくは結婚したカップルであり、「バスルームに ルージュの伝言♪」という一節からも、大人の女性が主人公であることがわかる。

あえてライトに振る舞っているが、たそがれ時にひとりで列車に乗って彼の母親のもとに向かう不安な気持ちがよく描かれており、逆に遊び人な彼への想いが浮き彫りに。

この曲には、気持ちとは裏腹に強がる女性が描かれている。 

松原みき「真夜中のドア~stay with me」

松原みき「真夜中のドア~stay with me」が収録されたアルバム『POCKET PARK』。


「ルージュの伝言」は少し古風な一面もあるが、もう少し現代的でウェットな恋愛観を味わうなら、松原みきの「真夜中のドア~stay with me」がいいかもしれない。

松原みき「真夜中のドア~stay with me」


この曲は'79年に発表された彼女のデビュー曲だが、40年以上もの時を経てリバイバルヒットし、世界各国のチャートにランクインするという異例の現象が起きた。まさに、シティポップ再評価の象徴と言ってもいいだろう。

当時のディスコサウンドに乗せたダンサブルなナンバーだが、描かれている恋愛は少々ドライだ。

「私は私 貴方は貴方」や「恋と愛とは違うものだよ」といった会話から割り切った関係に見えるふたりだが、主人公の彼女は常に「貴方を感じていた」と歌う。そして別れた季節を忘れられずにいる。

スタイリッシュな感覚のようでありながらも、未練たっぷりな気持ちが隠されているのだ。

竹内まりや「Plastic Love」

竹内まりや「PLASTIC LOVE」が収録されたシングル。


もっとドライな女性を描いた名曲というと、竹内まりやが'84年に発表した「PLASTIC LOVE」が筆頭だろう。

竹内まりや「PLASTIC LOVE」


この曲もブラックミュージックに影響を受けたサウンドが受けて、海外でのシティポップ・ブームを牽引した一曲だ。

主人公の女性は夜遊びに興じて、「恋なんてただのゲーム 楽しめばそれでいいの」と強がるが、実は別れた彼のことが忘れられない。

しかも、ディスコで知り合う男性はいつも彼に似ていて「なぜか思い出と重なり合う」ため、ときには涙ぐんだりしてしまうのだ。

竹内まりやに限らず、当時の楽曲にはこういったタイプの女性がよく登場する。

恋愛はあくまでも遊びと言いながらも、実は本当の愛に飢えている、恋愛ベタという女性像は鉄板だ。

昼間はサーフィンやテニス、夜はディスコといった'70~'80年代の若者文化の裏には、気軽にナンパするようなシチュエーションも数多くあり、軽薄な恋愛がはびこっていた時代でもある。

それだけに、本当の恋とは、真の愛とは、といったメッセージが密かに込められた楽曲は、当時の女性たちに共感を得ていたのではないだろうか。
3/3

人気シティポップに登場する男は、実に情けなかった……

作詞は松本隆が手掛けている。大滝詠一「君は天然色」

作詞は松本隆が手掛けた大滝詠一「君は天然色」が収録されたアルバム『A LONG VACATION』。


では、男性に見る恋愛観はどうだったのだろうか。

'81年に発表しミリオンヒットとなった大滝詠一のアルバム『A LONG VACATION』の冒頭を飾る「君は天然色」を聴いてみよう。

大滝詠一「君は天然色」


主人公の男性は、過去の女性のことを思い出している。

モノクロームになってしまった想い出に「色を点けてくれ」と言い、さらには「もう一度そばに来て」と願う。
advertisement

設定としては先述の「真夜中のドア~stay with me」と似ているが、こちらのほうがファンタジックな感覚のためあまり現実味がないし、主人公が幼く感じられる。

未練たらたらな男の気持ちをストレートに伝えた曲だ。

杉山清貴&オメガトライブ「SUMMER SUSPICION」


最後に、シティポップをお茶の間に広めた立役者、杉山清貴&オメガトライブの'83年のデビュー曲「SUMMER SUSPICION」を聴いてみたい。

ドライブするカップルを描いたこの曲。彼女は、以前プレゼントした指輪をいつの間にか外している。

「僕と誰を 比べてるの?」とジェラシーを感じても、なかなか聞けない。しかも歌詞をよく見ると、男性ではなく女性が運転しているようだ。

爽やかなサウンドでありながら、気持ちを伝えられない情けない男が描かれていることがわかる。


それにしても、女性と男性の恋愛観には、大きな差があることが浮き彫りになった。

シティポップの代表曲を数曲紐解いただけだが、あきらかに女性の方が現実感があって、大人っぽい。一方の男性は、女性に比べると圧倒的に未熟だ。

それは、今現在においてもまったく変わっていないということを思うと、恋愛に関しては時代に関係なく女性優位なのである。そのことをシティポップの名曲を聴くと、強く思い知らされるのだ。

栗本 斉=文

SHARE