自然との関り方、文化、発想の違う“欧米と日本”
出雲 運命ってあると思いますよ。それをミドリムシ的にお話すると、西洋の人というのは、人に対して自然は敵なんですよ。
自然というものを細分化して、自然というものを克服するために、人間は神様から特別な使命をもらったと、欧米の人は人間と自然というものを対比して捉えたんですね。
ですので、そういう西洋の研究者の感覚でいうと、ミドリムシは微生物じゃないですか。微生物というのは、全部バイ菌なんですよ。
そのバイ菌というのは、全部人間がコントロールするものであって、やっつけるもの、殺菌するための“悪もの”なんです。それを殺す、バイ菌をやっつけるのがいわゆる抗生物質すけど。
で、日本は、自然と自分が一体となっていて、自然の良さを生かして人間が豊かになったらいいよねと、自然に考える。ヨーロッパの人は絶対こう考えないですよ。
日本人は善玉菌とか醸造とか発酵については、英語でもfermentationという言葉があるんですけど、発酵の研究者が当たり前のようにいる。欧米には発酵して良くなるよね、なんて思っていない。
星野 そうなんだ、なるほどね…。長谷川(浩己)さんっているじゃないですか、私らのランドスケープアーキテクト。
この風景(竹富島)に合うプールって何なんだろうというときに、図面の段階では、最初デザイン四角だったんです。それがちょっと西洋に見えちゃうんですよね。
だからど真ん中に西洋が見えて、琉球らしくないとか、竹富の原風景に合わないとかっていうふうに思い始めて、2人で集落を歩いているときに雨だったんですよ、たまたま。
で、舗装していない道が多いから、水たまりがあちこちにいっぱいできて、そこから彼がヒントを得たんです、水たまりから。
水たまりって、真ん中辺にちょっと水がだんだんたまっていくんですけど、そのイメージからこのプールができ上がって、やってみたら、本当にいい感じのフィット感で、よかったなと思って。
【星のや竹富島】の敷地内中心に作られた美しいプール。四角形ではなく、円形にすることで竹富島の空気感にもリゾートにもピタリと嵌った存在に。
出雲 それが完全に日本の発想なんですよ。ヨーロッパの人だったら、自然をそのまま生かしたら人間が負けていると考える。だから、コンクリート持ってきて、四角のでかいプールをドンと作る。
「ギリシャ時代から人間というのはこうやって、これが一番、俺が格好いいと思ってきたんだ」と。別にどっちがいいとか悪いとかじゃなくて、本当に違うんですよ、考え方が。
星野 やっぱりあれじゃないですか。八百万の神の日本と、向こうは一神教の神、ジーザス・クライストの世界との差かもしれないですね。こういう文化の差が、自然への対し方も違ってきたのかもしれないですね。
出雲 そうなんですよ。
星野 日本ってあちこちに神がいるみたいな考え方になるから、そこで、日本の神の場合は面白くて、飲んだくれている神がいたりする。まあバリ島なんかも逆にそうなんですよね、多神教の世界なので、日本にむしろ近いんじゃないかな。
東洋と西洋の差はそういうことかも知れない。出雲さんが言っているのは、西洋的な文化では、ミドリムシのような微生物の研究は進みにくい、こういうことなんですよね。
出雲氏が気付かなかった“ぽっちゃりミドリムシ”がバイオ燃料への道を開いてくれたと対談の“核心”に迫る。
星野 何となく分かる気がします。
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