株式会社ウェルネスミー 代表取締役CEO 長瀬次英
▶︎すべての画像を見る インスタグラム・ジャパン初代日本事業代表責任者など、さまざまな重職を歴任してきた日本屈指のビジネスパーソン。
現在はフリーランスで、複数の会社の社外取締役や顧問業を務めている実業家の長瀬次英さんに、人生を楽しむためのヒントを聞くインタビュー。
日々忙しく過ごしているのかと思いきや、長瀬さんはどこかマイペース。
トップビジネスパーソンならではのFUN-TIMEの享受の仕方とは。
趣味のオンラインゲーム、実は世界屈指の腕前!
「なんならずっとFUN-TIMEですよ」。
苦笑交じりにそう答える。真意を測りかねたので改めて問うと、「遊びのときはもちろんですが仕事の時間も常に楽しいんです。特に最近はほぼ自宅作業なので、より遊びと仕事の境目がないと言いますか」。
確かに広々としたリビングには、趣味で描いているというアクリル画や大好きな漫画、筋トレスペースなど、長瀬の好きなものがちりばめられている。まさに子供の頃に夢見た秘密基地の大人版とでもいおうか。
「絵を描いて読書をして、映画を見たり、仕事をしたり、ご飯を作ったり……。ずっとぐるぐるしていますね(笑)」。
立ったままそう語る長瀬の背後には、大きなパソコンが鎮座している。
自宅にはノート型を含めて複数のパソコンが散見されるが、こちらのゲームセンターにあるレーシングゲーム機のようなセッティングは明らかに仕事用ではない。
「オンラインゲーム専用のもので、実は私、そのゲームの世界ランカーなんです」。
驚きのあまり現場スタッフがひっくり返りそうな事実をこともなげに語ったかと思いきや今度は「お見せしたいものがあるんです」と言い、忙しなく中座するとアルバムを大事そうに抱えながら戻ってきた。
中身はビックリマンシール。読者の中には子供の頃に収集した人も多いはず。長瀬は大きな瞳をキラキラさせながら、1枚ずつ丁寧に説明をする。
「約30年前のものがほぼすべて揃っていて、なかには1枚数百万円で取引されているものもあるんです。子供の頃からずっと収集し続けていて今も探しています」。
一方玄関には素人のものとは思えない、チューンナップされた流線形のロードバイクが置かれている。屋外でのFUN-TIMEも日々堪能しているそう。
「外出してすぐに楽しい場所にたどりつけるから、住居をここにしました。明治神宮を参拝することが毎朝のルーティーンになっています。空気がきれいで心も身体も浄化されたような気持ちになるんです」。
飽きたら数分ごとに次の楽しいことをするのでストレスゼロ。FUNなものに囲まれて過ごすことを考えているというよりも、嫌なことを避けてきた結果こうなったのだという。
「嫌なことは1秒もしません。それはすごく心がけています。例えば面白いと評判の漫画や映画でも、途中まで見て面白くないなと思えばやめますし」。
“好きなことだけをして生きる”。この言葉だけ聞くと羨望や嫉妬など、さまざまな思いを抱くだろう。
誰もがこういう生き方をできると思うかと訊くと、「できるんじゃないですか。でもちょっと大変ですよ」と、ここでも平然と語る一方、実体験を伴っているだけに言葉に重みがある。
今でこそ複数の企業で役員職に就き、都心一等地に住まい、はたから見れば成功者だ。だがここまでくるには辛酸を舐めることも多かったという。
「社会人になりたての頃は人の言うことを聞きすぎて失敗しました。会社や上司の指示を忠実にこなすだけで自分には何も残らない。
このことに気付き、どうせなら好きなことだけをしようと決めました。というか好きなことしかうまくならないので、好きなことを極めることがいろんな意味で得になると思ったのです。
30代後半から仕事の内容や出会う人、口に入れるものまで好きなものに絞りました。
仕事に関する嫌なことって、実は人間関係に起因することが多いんです。私はネガティブなことを気にしないことには長けているのでそこは徹底しています」。
こう聞くとドライな人に映るが、長瀬が人生で最も大事にしていることは人との出会い。
「仕事でも趣味でも、人生で影響を受けているのはこれまで出会った人たちですから今後も大事にしたいです。素敵な人で、例えばその人が釣りが好きなら自分も興味を持ちますし。
特に年を重ねてから素敵な人に出会うことは難しいので、出会いは貴重な財産になっています」。
そう話し、先ほどと同じように再び中座する。思いのまま、自由な振る舞い。今度は小箱を抱えて戻ってきた。中身はファイリングされた絵はがき。
「ビックリマンシールも財産ですが、これも私にとっては宝物。画家だった祖父は当時、自由気ままに日本中を周遊していたようで、旅先で絵とメッセージを添えて祖母に送っていたみたいなのです。
ふたりのやりとりや祖父の祖母への愛し方も素敵だなと思い、祖父が亡くなったときにもらいました。祖父は当時から“FUN”を共有していたみたいです(笑)」。
絵はがきをパラパラと眺めながら神妙に語る途中、思い出したように「そうそう、この絵はがきには感謝しなきゃいけないんです」と、今度は笑顔を交えて続ける。
「インスタグラムが日本に浸透する以前、会議の席でこの絵はがきを見せながら社長の前でプレゼンしたのです。
『今のインスタグラムは祖父がやっていたことと同じで正直、新しい発想ではない。
好きな人とつながって、好きな人に今自分が何を楽しんでいるかを伝えられることがインスタグラムの魅力であるなら、この絵はがきのやりとりこそがまさにインスタグラム。
私はこの絵はがきを通してその魅力がわかるから、今後日本でどうビジネスにするかもわかります』と。
かなり生意気でしたが、それを聞いた当時の社長が『じゃあ君が日本の代表をやってくれ』って(笑)。だから僕がインスタグラム・ジャパンの代表になれたのはこの絵はがきのおかげ」。
そう笑顔交じりに語り終えるやいなや、今度は絵筆を執り描きかけのキャンバスに向かう。
「あ、私のことは気にせず、写真は適当に撮っていただいて大丈夫ですから」と言うと、気ままに筆を走らせ、ここでも好きなことに没頭する。
撮影も取材も含めて、長瀬にとってすべての時間がFUN-TIME。リビングに流れる自由で温かな時間。冒頭の言葉の本当の意味がわかったような気がした。
2/2