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世界で活躍する今も「僕自身は絵を描いてる人ってだけ」



ーー花井さんの才能が見い出されたのは、2005年に開催された1回目のグリーンルームフェスティバル。フードブースを出店する先輩のために花井さんが絵を描いた看板が、来日中だったカリフォルニアのギャラリーオーナーの目に留まったのだ。

そこから海外のアートシーンで作品を発表。ビームスやヴァンズ、グレゴリーなどのブランドのデザインも手掛け、一躍有名に。世界的な作家になった今も、花井さんは「自分は何も変わってない」と話す。

花井 最近は、あれ描いてこれ描いてっていうオーダーはなくなってきて、自分が描きたいものだけを描ける環境になってきたことはうれしいです。でも、やってることは変わってない。アーティストなのかイラストレーターなのか、人からいろいろと呼ばれますが、僕自身は『絵を描いてる人』ってだけです。

栗田 傍から見ていると、アーティストとしてどんどんビッグになってる実感はあります。でも花井さん自身は変わらないし、僕との関係性も変わってないですね。

花井作品に「ノンタイトル」が多い理由

ーー「とはいえ、作風は変わってるんじゃないかな」と栗田さんは見ている。



栗田 一見、変わってなさそうですけど、絵の雰囲気もキャラクターもやっぱり徐々に変わっている。猫が登場したり。花井くん、人物を描くときって誰か近くにいる人を想像してるの? 

花井 顔そのものっていうよりは、友達がこんなことしてたなとか、こうだったらいいなとか、何か勇気づけられたらいいなとかは想像して描いてるかな。

ーー花井作品はあまりタイトルが付けられないのも特徴だ。その理由について、本人は次のように話す。



花井 タイトルを付けちゃうと、見る人が面白くないかなと思って。見た人がそれぞれ、その人なりのことを思って見てもらった方が楽しいじゃないですか。もちろん、僕なりのストーリーはありますけどね。

このキャラクターは怒ってるのか、喜んでるのか、困ってるのか、楽しんでるのかって、見る人によって感じ方は違うじゃないですか?自由に決めてもらった方が僕はいいですね。

ーーこの点が「イラストとアートの違い」だと花井さんは考えているようだ。

花井 イラストは文章を補足するもので、アートはそれ自体で完結するもの。タイトルを付けるときもありますけど、細かくはやりません。


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