イケてる大人たちは今、自室のアップデートに余念がない。インテリアや家電はもちろん、やっぱり欠かせないのがアートである。 その選択肢は少なくなく、何を選ぶか大いに迷っちゃうワケだけど、ここでも“新しさ”や“ストーリー性”は重要なファクター。 まもなく発売となる日本人アーティスト、花井祐介の新作は、我々が今まさに探し求めている作品そのものかもしれない。 今回登場するのは、カウズを長年支えるパートナーとしても有名な香港のクリエイティブスタジオ「オールライトリザーブド」と花井の協業作。 花井にとっては初となるウッドスカルプチャーで、人形型のそれは縦約19インチ(48cm)と存在感抜群。花井作品としては過去最大サイズの立体アートだ。 20代で渡米した花井はサンフランシスコでアートを学び、西海岸のカウンターカルチャーの影響を色濃く受けた。結果、今作からも読み取れるように、日本の繊細な美的感覚とアメリカのレトロなイラストレーションを融合した独自のスタイルを確立。今では世界中に活動の場を広げている。 「普通のフィギュアより少し大きめですが、木彫りの人形なので北海道の木彫りの熊に腰掛けてもいいし、椅子に腰掛けさせても、棚のエッジに腰掛けるように置いてもいい。たまに眺めて、失敗してやけ酒している馬鹿な男を笑ってください」と花井は言う。 作品の主人公のイメージは、「大変な人生で疲れていても、もう一度上を向いて頑張る人」だそう。人相こそ決して良くないものの、どこか憎めない愛嬌を感じる。夜な夜な酒を飲みながら自分を重ねてみれば、ポジティブな気持ちになれそうだ。 これらの作品名は『DOWN BUT NOT OUT/ダウン・バット・ノット・アウト』。「ダウンはしたけど、まだKOはされていない」というボクシングから派生した格言である。 人生がうまくいかないときの辛い気持ちを自虐的に茶化して笑い、また前に進む。そんなポジティブでシンプルな生き方を花井流に表現した。 「子供の頃から友人とふざけて茶化しあいながら絵を描くのが好きでした。友人の癖や失敗、似顔絵を茶化して笑い合ってきました。やってることは今でも変わりません。自分たちの人生は子供の頃に思い描いていたような輝かしいものとはかけ離れています。馬鹿な失敗をたくさんしてきました。でもその度に友人と酒を飲み、自分たちの失敗を自虐的に笑い合い明日のエネルギーにしてきました」。 さらに花井は続ける。 「今の人生は子供の頃に思い描けなかったほど充実しています。失敗したり嫌な目にあったり大切なモノをなくしたり、大変なウイルスが世界中に蔓延したり、生きていると辛いことは沢山あるけど、生きている限り終わっていない。ちょっと休めば立ち上がって、また前に進みます。『DOWN BUT NOT OUT』は、そんな気持ちで作った作品です」。 作品はともに8月10日(月)、日本時間の12時に世界同時発売。コロナ禍は終息の兆しさえ見せないが、いつの日か「あの時代に買ったアート作品なんだ」と語れる日がくるに違いない。我々も今は眉間にシワを寄せて、酒を片手にこの大変な時期を突っ走ろう。