当記事は「FLUX」の提供記事です。元記事はこちら。 カパクイキという名でも知られるハワイアンキルトには、島々で受け継がれた物語がある。地元のキルト作家は、この際立った美意識の伝統をオーダーメイド作品に取り入れ、継承している。その歴史や作品を紹介する。
カパクイキは、ファストファッションとは対極にある。高い技術を持ったキルト作家でも、じっくりと2年以上かけてハンドキルティングでハワイアンキルトを仕上げる。
世界に類を見ないこのテキスタイルは、ある世代から次の世代へと受け継がれるものとして、しばしば大切な物語を運ぶ。トゥトゥ(祖父母)の家で、キルトが誇らしげに壁に絵画のように掛けられていたり、ソファに丁寧に被せられていたりするのをよく目にするだろう。
カパクイキは、200年以上にわたってハワイの島々の象徴となっている。多年生のウル(パンの木)の葉のような自然の息吹を感じるモチーフが描かれることが多く、バランス良く、シンメトリックに配置される。
明るい色のモチーフと伝統的な背後の白い布地が鮮やかなコントラストを成し、名高いカパクイキの美意識を醸し出す。
1820年、キリスト教の宣教師がヨーロッパの裁縫技術とパッチワークをハワイに持ち込んだ。ハワイの人々は、この新しい技術と、ワウケ(カジノキ)の樹皮を層にして重ね、叩いて薄くしたカパモエという独自の布作りを融合させた。
長年の歳月を経る中で、織布やほかの素材が利用できるようになり、キルト作りが発展していった。今では、ほとんどのキルトは、100%コットンまたはポリエステル混の布地で作られている。
昔ながらのキルト作家はこの数十年間で徐々に減ってきているが、キルトの業界団体が若い世代に技術を伝え続けている。次にご紹介するのは、個人やそのオハナ(家族)のために、オーダーメイドのキルトを販売または制作しているネイティブ・ハワイアンのキルト作家やハワイで活動するキルト作家たちだ。
サルベージ・パブリックとポアカラニ & Co.
パット・ゴアラングトンによるキルト。デザインは、ポアカラニ & Co.のジョン・セラオ。写真提供=サルベージ・パブリック。
カパクイキ フイ(団体)のポアカラニ & Co.は、ハワイアンキルトの屋台骨とされている。キルトマスターでもあった創立者の故ジョン&ポアカラニ・セラオ夫妻は、自分たちのコミュニティのキルト教室を通じてハワイアンキルトを不滅のクラフトにまで高めた。
今日でも、ふたりの遺志が受け継がれているのが、このサルベージ・パブリックとのコラボレーションから見て取れる。ブランド創立者のジョセフ&ノア・セラオ兄弟は、大おじに当たるジョンのキルトとともに育った。
同社のオーナーは、ハワイアンの血を引くセラオ兄弟とふたりの幼馴染みのナパリ・スーザの3人である。オーダーメイドの2色キルトは1万ドルから。納期は6カ月から8カ月。
キャサリン・ウィン キルト
キャサリン・ウィンのイイヴィ(ベニハワイミツスイ)のキルト。パターンは、キャシー・ヴァン・ブリュッヘン。写真提供=キャサリン・ウィン。
ビッグアイランド(ハワイ島)のサウス・コナを拠点に、キャサリン・ウィンはハワイアンキルトを20年以上も作り続けている。
依頼制作の場合、顧客とキルトのデザインについて詳細に話し合う。絵画のように仕上げる絵キルトやメモリアルキルトの場合は特にそうだ。また、家族に受け継がれた未完成のキルトもハンドキルティングで仕上げることが可能。
価格はインチ単位で計算される。ハンドキルティングのクイーンサイズのハワイアンキルトは1800ドル前後から。
リック・スターク
リック・スタークによる“He Mala Pua Loke o ka Wahine Mo‘i(女王の花園)”。写真提供=リック・スターク。
リック・スタークはアメリカ本土の出身だが、20年以上もキルト作家としての経験がある。キルト作りとレイ作りで有名なヴァイオレット・ハナコ・スズキ-ヒューおばさんの指導のもとで学んだ。
エヴァビーチにあるオアフスタジオの作業場で、顧客の一人ひとりに幅広くインタビューを行い、注文されたキルトに独自のデザインを施している。
彼のステッチはとても細かく、1インチあたり6~8ステッチが一般的であるのに対し、彼は14ステッチ前後も施す。制作期間は約2年で、価格は2万5000ドルから。
ハワイアン・キルト・コレクション
写真提供=ハワイアン・キルト・コレクション
今でもすべてのアイテムをハンドキルティングしているハワイアン・キルト・コレクション。33年もワイキキの中心的存在として君臨し、ハワイで最古のキルト小売店となっている。
創業者はカイルア生まれのジョン・マイケル・ギランで、カパエケと呼ばれるハワイアンキルトの布地とパターンを取り入れたガーメントバッグを生んだ人物である。オーダーメイドは2070ドルから。
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