OCEANS

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「超薄型」ボディに秘められし卓越した技術の数々




厚み1.8mmにして、歴とした機械式手巻き時計、というのがポイントだ。

この見た目で、正確に時を刻むメカニズムと、容易に曲がらない、壊れないための強度を実現している。



そしてこれらが、ケースの強度を支えるパーツ。

ベゼルや地板、裏蓋からなる4つの構造体を組み合わせ、薄さと強度のバランスをとりながら、美しい多面体である「オクト」を成立させているのだ。

「ブルガリ フィニッシモ ウルトラ」の構想段階のスケッチ画。

「ブルガリ フィニッシモ ウルトラ」の構想段階のスケッチ画。


なぜ、こうした構造で極薄を実現できたかというメカニズムの詳細は、ぜひ時計専門サイトを覗いてほしい。本当にスゴイから。本記事では軽く触れるにとどめておく。

職人技で組み上げる工程は、細かな作業の連続。ブルガリは、本作において、8つの特許出願を行っている。

職人技で組み上げる工程は、細かな作業の連続。ブルガリは、本作において、8つの特許出願を行っている。




裏側を見て気づいたのだが、あるはずのリューズがない。

それもそのはず、1.8mmに合わせた径のリュウズだったら、巻きにくいことこの上ないからだ。

そのために、周囲にローレット(ギザ)加工のあるディスクを2つ装備。

ひとつはゼンマイの巻き上げ、もうひとつは時刻調整と、本来のリューズがもつ2つの機能をバラシて、いわば横向きに搭載している。



そして、メカニズム以外にもう一点触れておくべき点がある。

ダイヤルの6分の1ほどを占め、滋賀県における琵琶湖くらいの強い存在感を醸し出しているQRコードだ。

これにより、所有者だけがアクセスできる専用のデジタルユニバースが提供されるだけでなく、ブロックチェーン技術を用いたNFTの実装により、この時計の真正性をオーソライズしてくれる。

また、QRコードがレーザープリントされているのは、動力源となる主ゼンマイが収まる香箱。

構造上、機構が剥き出しとなる本作において、ともすると味気ない存在になりかねないところを、先端的な発想とセンスによって、デザインのアクセントとしている点にもグッとくる。

折しも「オクト」コレクション誕生から10周年。そのアニバーサリーを祝すのには、最高の一本と言っていい。

さて、こちら価格にして5000万円オーバー、世界限定10本。

こうした記念碑的時計は、概ね世界の愛好家たちがいち早く先鞭をつけるため、この記事を見て「欲しい」と思った人も、入手は難しいかもしれない。

だが、ブルガリが薄型時計製造のなかで培ってきた素晴らしい技術の一部は、その他の「オクト」シリーズで堪能することができる。気になった人は、「オクト」から、時計趣味を始めてみるのもいいだろう。


[問い合わせ]
ブルガリジャパン
03-6362-0100

髙村将司=文

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