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2022.04.09

「ランクル80、プラド90」中古購入時のチェックポイント解説、同時に人気のワケを深掘り


 特集:ランクル・レトロスペクティブ

長年ランクルを手掛けているフレックスドリームの谷崎さんによれば、現在同社で最も人気があるレトロスタイルのランクルは、ランクル80系と、プラドの90系。

80系は「程良くクラシカルな雰囲気がありつつ、乗用車感覚で乗れる、ベストバランスなランクル」(谷崎さん。以下カッコ内はすべて)で、90系は「中古車の台数が安定しているから手に入りやすく、カスタムすると見た目もカッコ良くなる」のがその理由らしい。

そんな狙い目の80系と90系を、さらに深掘りしてみよう。
 

80系は通っぽい“引き算のカスタム”が人気!

ランクル80系。

ランクル80系。


1989年に60系の後継として登場した80系。足回りは、コアな4WDファンも納得の前後リジッド(左右輪を1本の車軸で連結する方式)サスペンション。これは60系と同じで、トラックにもよく使われるサスペンション形式だ。
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乗用車が採用している独立懸架式と比べて悪路走破性が高くてタフなのが特徴で、現在でもスズキ「ジムニー」が採用しているほどだ。

「ただし、60系がリーフスプリングだったのに対し、80系はコイルスプリングを採用しました。60系はお世辞にもオンロード上での乗り心地は良いとは言えないけれど、80系は格段に良くなりました」。

同社の80系の60系風カスタマイズ例。

同社の80系の60系風カスタマイズ例。


またインテリアデザインや快適装備も当時の高級車並み。「そのうえで60系の佇まいがありますから、やはり人気が出ますよね」。

新車時に人気だったのはあれこれてんこ盛りで装備された最上級グレードだが今は……。

「ゴージャスというより道具感が強いほうが人気。例えば最上級グレードはドアハンドルやミラーなど各部外装パーツがボディ同色だったのですが、下位グレードっぽく素っ気ないメッキパーツやブラックにペイントするほうが人気なんです」。

60系風にカスタマイズする際、同社ではヘッドライト周りだけでなく古い車ならではのプレスラインを表現するためにボンネット、フェンダーもオリジナルパーツに変えている。

60系風にカスタマイズする際、同社ではヘッドライト周りだけでなく古い車ならではのプレスラインを表現するためにボンネット、フェンダーもオリジナルパーツに変えている。


同様に装着されていたオーバーフェンダーを取り外しナローボディ化とか、バンパーもメッキ、凝ったデザインのアルミホイールより鉄チン風のアルミホイールなど、道具感を出すため、同社ではあえてドレスダウンカスタムを施している。

フレックス・ドリームが80系を“ドレスダウンカスタム”した一例。

フレックス・ドリームが80系を“ドレスダウンカスタム”した一例。


「当時はさまざまなパーツを取り付ける“足し算”がカスタムの基本でしたが、現在では余計なパーツは取り外し、飾りっ気をなくしていく、言い方を変えると低グレード化させるような“引き算”のカスタムが主流になっています。

本来のランクルに与えられた機能としての美しさ、道具感が増したツウ好みなスタイルです」。
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料理しやすく、しかも“引き算”がよくハマる90系

プラド90系。

プラド90系。


一方のプラド90系は1996年に登場。もともとメーカーが「より気軽にランドクルーザーを楽しんでもらおう」と作ったプラドだけに、足回りは前輪だけ独立懸架式が採用されている。

当然、オンロードでの乗り心地が良く、“普段の街乗りがしやすい”ランクルだ。

「以前は今ほど人気は高くなかったのですが、キャンプブームとともに一気にブレイクしました。90系は5ドアでも全長4675mmですから現行型のハリアー並みとサイズ感もいいし、エンジンもランクルと比べて排気量が小さいから付き合いやすいんです」。

同社の90系のカスタム例。5ドアだが丸目ライトが備えられている。

同社の90系のカスタム例。5ドアだが丸目ライトが備えられている。


同社ではランクルシリーズにクラシカルな雰囲気を与えたり、あえて低グレード感のあるテイストにカスタマイズしているが、そうした“料理”がしやすく、しかもレトロなテイストがよく似合う車のひとつだとか。
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「オリジナルの3ドアは丸目、5ドアは角目ライトでしたが、人気があるのは丸目。ウチでは5ドアも丸目にカスタマイズしています」。

ほかにも標準装備のオーバーフェンダーやドアパネルを取り外したナローボディ化、リフトアップなど、同社秘伝のレシピがビシッとハマる一台だ。


ランクルの大敵は、走行距離より修復歴より“錆”!?

ランクルシリーズがどれだけ頑丈な車といっても、80、90系ともに約20〜30年前の車だ。

それに悪路走破性が高いということは、悪路をガンガン走り込んだ中古車もあるということ。

前のオーナーはこんな道を走っていたかも……。

前のオーナーはこんな道を走っていたかも……。


つまり“街中を走る”だけの車以上に、経年劣化だけでなく、これまでのオーナーの使用状況次第でランクルのコンディションは大きく変わるのだ。

そのため「走行距離自体はひとつの目安にはなりますが、イコール現在のコンディションとはならないんです」という。

「距離の数字が少なくてもコンディションが悪い場合もあるし、多くても調子が良い場合もあります。ランクル系ならではのチェックポイントがあるんです」。



ランクルシリーズは走破性が高いが故に、例えば、オフロードを走行していれば、普通の車よりも錆がある可能性は捨てきれない。

また雪国で活躍していた個体だと融雪剤の影響で下回りに深刻なダメージを受けている車両もある。

そのため「ボンネット内や下回り、フレームなど、とにかく隅々まで見たほうがいいでしょう。表面だけの錆で、処理すれば大丈夫な場合もあれば、中まで錆が浸食している場合もあります。

いくら頑丈なランクルでも重要なパーツの中まで錆が侵食していると、もうそのパーツは交換や大幅な補修が必要になります」。
 


そのほかにも、それだけで敬遠しがちな「修復歴車」に関しても、普通の乗用車とは少し見方が変わってくる。

ボディとフレームが一体になった現在主流のモノコックではなく、頑強なフレームの上にボディが乗る形で作られているランクルは、走行にまったく問題のないボディ部分が修復されている場合もある。

「修復歴車」だからと言って一概に身構える必要がないのも、ランクルの特徴なのだ。

「キレイ、汚いで判断せず、『走る、曲がる、止まる』といった道具としての基本的な性能をチェックしたいところです。そしてその車特有のウィークポイントを把握しなければなりません」。

 ◇

 要は餅は餅屋。80系も90系も、こういったランクルならではのポイントをよく知っているショップで購入するのが、何よりのチェックポイントかもしれない。

特集:ランクル・レトロスペクティブ●絶賛延長中のランクル熱狂時代。欲しい気持ちが先立ち、本質を理解せず手を出せば、後悔がもっと先に立つ。そこでお役立ち、プロに訊いた今のところのレトロスペクティブ。車種ガイド、相場、狙い目の最前線。

[取材協力]
フレックス・ドリーム
www.flexdream.jp

籠島康弘=文

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