料理しやすく、しかも“引き算”がよくハマる90系
プラド90系。
一方のプラド90系は1996年に登場。もともとメーカーが「より気軽にランドクルーザーを楽しんでもらおう」と作ったプラドだけに、足回りは前輪だけ独立懸架式が採用されている。
当然、オンロードでの乗り心地が良く、“普段の街乗りがしやすい”ランクルだ。
「以前は今ほど人気は高くなかったのですが、キャンプブームとともに一気にブレイクしました。90系は5ドアでも全長4675mmですから現行型のハリアー並みとサイズ感もいいし、エンジンもランクルと比べて排気量が小さいから付き合いやすいんです」。
同社の90系のカスタム例。5ドアだが丸目ライトが備えられている。
同社ではランクルシリーズにクラシカルな雰囲気を与えたり、あえて低グレード感のあるテイストにカスタマイズしているが、そうした“料理”がしやすく、しかもレトロなテイストがよく似合う車のひとつだとか。
「オリジナルの3ドアは丸目、5ドアは角目ライトでしたが、人気があるのは丸目。ウチでは5ドアも丸目にカスタマイズしています」。
ほかにも標準装備のオーバーフェンダーやドアパネルを取り外したナローボディ化、リフトアップなど、同社秘伝のレシピがビシッとハマる一台だ。
ランクルの大敵は、走行距離より修復歴より“錆”!?
ランクルシリーズがどれだけ頑丈な車といっても、80、90系ともに約20〜30年前の車だ。
それに悪路走破性が高いということは、悪路をガンガン走り込んだ中古車もあるということ。
前のオーナーはこんな道を走っていたかも……。
つまり“街中を走る”だけの車以上に、経年劣化だけでなく、これまでのオーナーの使用状況次第でランクルのコンディションは大きく変わるのだ。
そのため「走行距離自体はひとつの目安にはなりますが、イコール現在のコンディションとはならないんです」という。
「距離の数字が少なくてもコンディションが悪い場合もあるし、多くても調子が良い場合もあります。ランクル系ならではのチェックポイントがあるんです」。
ランクルシリーズは走破性が高いが故に、例えば、オフロードを走行していれば、普通の車よりも錆がある可能性は捨てきれない。
また雪国で活躍していた個体だと融雪剤の影響で下回りに深刻なダメージを受けている車両もある。
そのため「ボンネット内や下回り、フレームなど、とにかく隅々まで見たほうがいいでしょう。表面だけの錆で、処理すれば大丈夫な場合もあれば、中まで錆が浸食している場合もあります。
いくら頑丈なランクルでも重要なパーツの中まで錆が侵食していると、もうそのパーツは交換や大幅な補修が必要になります」。
そのほかにも、それだけで敬遠しがちな「修復歴車」に関しても、普通の乗用車とは少し見方が変わってくる。
ボディとフレームが一体になった現在主流のモノコックではなく、頑強なフレームの上にボディが乗る形で作られているランクルは、走行にまったく問題のないボディ部分が修復されている場合もある。
「修復歴車」だからと言って一概に身構える必要がないのも、ランクルの特徴なのだ。
「キレイ、汚いで判断せず、『走る、曲がる、止まる』といった道具としての基本的な性能をチェックしたいところです。そしてその車特有のウィークポイントを把握しなければなりません」。
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要は餅は餅屋。80系も90系も、こういったランクルならではのポイントをよく知っているショップで購入するのが、何よりのチェックポイントかもしれない。
特集:ランクル・レトロスペクティブ●絶賛延長中のランクル熱狂時代。欲しい気持ちが先立ち、本質を理解せず手を出せば、後悔がもっと先に立つ。そこでお役立ち、プロに訊いた今のところのレトロスペクティブ。車種ガイド、相場、狙い目の最前線。
[取材協力]フレックス・ドリームwww.flexdream.jp