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SNSの影響で驚愕の価格がついた商品も!

U.S.M.M.A.とは船舶技師、航海士たちのための国立の軍士官学校のこと。この手のデザインのプリントは基本的にフロントに入るはずだが、手違いでバックプリントになったと思われる、稀少価値の高い逸品。

U.S.M.M.A.とは船舶技師、航海士たちのための国立の軍士官学校のこと。この手のデザインのプリントは基本的にフロントに入るはずだが、手違いでバックプリントになったと思われる、稀少価値の高い逸品。


こうしたある種、狂気的ともいえる熱気はSNSカルチャーの浸透と切り離しては語れない。

今までひと握りの古着フリークしか存在を知り得なかったレアものを、個人が世界へ向けてきわめて手軽に発信できる環境が整い、速く、広範囲に情報が届くようになった。

近年では2トーンのリバースウィーブに代表されるように、珍ピオンの情報が瞬く間に拡散されるため、それが好事家たちの所有欲を刺激しているのだろう。

「インスタグラムにアップロードするやいなや○○円で譲ってください、とダイレクトメッセージが来て、そこからのやりとりで売買が成立することもあると聞きます。

このような形でシーンが活発になるというのも、今の時代ならではで、面白さでもありますね」。

世界的なヴィンテージデニム&Tシャツ人気の過熱も、間違いなくSNSがその背景にあった。

しかしながら、デニム&Tシャツとスウェットでは大きく異なる点があるそう。今のところリバースウィーブ人気の高まりは日本独自の現象に見える、と藤原さんは話す。

「アメリカ人にとってチャンピオンのスウェットは、自国の大学や軍のロゴが入ったベーシックなアイテムでしかない。そしてどこかトレーニングウェアのイメージが脳裏をよぎるからなのか、ファッションとして見られないのかもしれません。

Tシャツであればタイやマレーシアなどの東南アジアも古着市場が活発ですが、厚みのあるスウェットは暑い国で売れません。気候的にも日本がちょうどいいというわけです」。

ヴィンテージTシャツでは、人気プリントをそれらしく再現したニセモノの存在が問題になっているが、リバースウィーブはどうなのだろうか。

「プロでも見分けがつきにくい贋作Tシャツがあるのに対して、リバースウィーブのニセモノはあまり聞かないですね。

新品とヴィンテージスウェットの表情や質感の違いは一目瞭然。すぐ見分けがつきますし、仮に近しい風合いまで加工しようとすると、それにかかる手間と販売価格がつり合わない。だからニセモノが流通していないのかもしれません。

とまあ、ここまでさんざん語らせてもらいましたが、この業界に長くいる自分にも理由がわからない現象はまだまだたくさんあります。

直近だと、スヌーピープリントのリバースウィーブがどんどん値上がりしているのに、その理由はまったく見当がつかない。

本当に奥深く、知れば知るほど世界は広がります。臆せず沼にハマってみてください!」。

椙本裕子=写真(静物)、水野美隆(zecca)、山本 大=写真(人物) 菊池陽之介、来田拓也、松平浩市=スタイリング 加瀬友重、髙村将司、増山直樹、礒村真介(100miler)=文

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